よくホラー映画では、登場人物が「だから、それやっちゃダメだってば」って事をやらかして事態をドンドン悪化させる、というのが定番であったりして、時にそれは観客をイライラさせるものではある。
という事で
音が出せない世界、そこでどうサバイヴするかというアイディア一発の感はあるが、わたしはとても楽しめた。
確かに、この映画にも瑕疵がないとは言わない。いわゆる突っ込みどころとか、ストーリー上の穴のようなところが気にならないと言えば嘘になる。
しかし、よく考えてみれば、主人公達が完璧な行動をするとは限らない。全ての言動がロジカルになされるとは言い切れない。
それは我々の人生もそうだ。正しい選択をして、隙のない人生を送っている人がどれだけいるか。わたし達は、あらゆる失敗や後悔を経験しながら、どうにかここまで生きているんじゃないか。
この映画で描かれる家族も、様々な過ち・失敗を繰り返している。わたし達は「どうして、もっと安全な方法を取らないのか?」とか「この状態で子供産む?」とか様々な疑問点をぶつける。それは正しい指摘ではあるのだが、そういった「正しい」選択を出来なかったのが彼等だ。母親(エミリー・ブラント)は、家族に起きたある不幸な出来事に対して後悔し続けている。父親(ジョン・クラシンスキー)もまた、家族を守りきれているのか、と問い続けながらサバイヴしている。彼等はスーパーヒーローでも天才科学者でもなく、それまではごくごく普通の市井の人だったはずだ。
その上で、終盤に父親が下したある決断にわたしは少なからずこころ動かされた。
だから、という訳でもないが個人的には、そういったロジカルに納得できない部分については、とりあえずスキップして良いような気がしている。そういうタイプの映画というものがあって、今作はそれにあたるんじゃないかな。
確かに、あらゆる欠点を指摘されるだろう。ロジカルに成立していない故に低い評価を受けるのも理解はできる。しかし、わたしはラストシーンで見せたエミリー・ブラントの表情、その一瞬によって、これまでの全ては昇華され、言いようのないカタルシスを得た。そのラストシーンを観ることが出来ただけで、とても価値があったと、本気で思っています。
おまけ 何気にマイケル・ベイが絡んでたのね。そう言われてみればクリーチャーが、それっぽい。