興味を持って観たいな、と思っていた映画が気がついたら上映が終わっていたりして結果見逃してしまった、ということはよくある話で。
で割とそういう作品は後にレンタルして観るか、というとそうでもなく結局見逃したままとなるケースが多い気がする。
というところにUPLINK吉祥寺でこういう企画が。
見逃した映画特集5years
https://www.uplink.co.jp/news/2018/52883
ラインナップも魅力的で観たい作品たくさんあるんだけど吉祥寺まで足を延ばすのがちょっとな、と思ってたら渋谷の方でも同じように見逃し上映をやってまして。
ということで観てきました。
予告編→ https://youtu.be/PEr7c5jHUTw
リン・ラムジーの作品は初めてなのでそれが彼女の特性なのかは判らないが、大胆な省略と少ないセリフによって構成されており、だから観客はバラバラに並べられたピースを合わせるようにして状況を推察する必要に迫られる。元軍人、幼少期に受けた虐待被害、母親への暴力、救えなかった女性たち…という情報は断片的に差し出される。
しかしそれらは作品に没入する障害にはならず、寧ろ主人公ジョーの心象に我々を誘う、そこにフォーカスを当てるような効果があったように感じる。
繊細で不安定なジョーの精神状態と圧倒的なバイオレンスが奇妙なバランスで描かれており、ジョニー・グリーンウッドのスコアは時には鼓舞し、そして時には不安を煽る。池のあのシーン、ちょっとタルコフスキーっぽくなかった?
帰還兵が性的被害の渦中にいる少女を助け出そうとする構図は確かにタクシードライバーを想起する。実際タクシーにも乗るし。
しかしジョーはトラビスではない。アイリスはトラビスに救われ元の世界に戻っていったが、果たしてニーナはどうだ。ニーナはジョーに救われたか?過去の懺悔をするかのようにニーナを救出しようとするジョーは、同時にニーナによって救われ赦されたのではないか。
ジョーを演じたホアキン・フェニックスは言うに及ばず、ニーナを演じたエカテリーナ・サムソノフの存在感が素晴らしい。終始生気のない瞳をしていたが、そんな彼女がラストに見せたあの表情。あの眼差し。素晴らしかった。
共に寄る辺なき者となった二人はどこを目指すのか。きっとどこでもいい。ニーナの言うように今日はビューティフル・デイだ。そんな二人の姿は私たちにはきっと見えない。
(ネタバレ)
最後無人になったダイナーの席を延々と写すラストシーン。ふと見るとコップの中の飲料が少しずつ減ってるように見えたのは気のせいだろうか。二人はそこにいる。しかし二人の姿は我々、ダイナーの客やウェイトレスにも見えていない。本当の姿はここにはない。