妄想徒然ダイアリー

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おれがおまえでおまえがおれで。【映画】『シークレット・ヴォイス』

未体験ゾーンの映画たち2019、という企画には色々興味深い作品たちがラインナップされていて、今日昼休みツラツラとホームページを見ていたら偶然見つけたこの作品。マジカル・ガールのカルロス・ベルムト監督作という事で。

『シークレット・ヴォイス』

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あらすじ トップシンガーであるリラは母親の死後10年表舞台から遠ざかっている。それどころかリラは記憶喪失状態。マネージャーであるブランカはリラ復活Liveの為に、リラの大ファンで完璧に近いコピーが出来るカラオケバーの歌手ヴィオレタをトレーナーとして雇う。そしていよいよLiveの日が近づいて…。

当時人物も上記以外はヴィオレタの娘マルタが出てくる程度だが、それぞれのキャラクターの描き方は重層的だ。

神秘的で謎めいたスター(リラ)、悩めるシングルマザー(ヴォオレタ)、多感で不安定な若者(マルタ)…といった各々キャラクターが持つ表面上の仮面は次第に変容していくが、その描写の印象を一言で言えば「静かだが心を抉る」という感じ。

例えばヴォオレタとマルタの関係性はある事件をきっかけにドライブしていくのだが、そのときカメラはヴォオレタを辛抱強く映す。彼女は大きく表情を変える訳ではないが、明らかに彼女の内部で何かが変わっていくのが解る。上手く言葉で表現出来ないのがもどかしい。

 

ああ、そうだ。音楽についても。この人は音楽の使い方に独特の間合いがあって、その異化効果が魅力のひとつ(マジカル・ガールでの長山洋子‼︎)だと思っていて。今作でもビートの効いたちょっとインダストリアル系ミュージックが巧みに使われていて、不思議な感情の揺さぶられ方を仕掛けてくる。

 

さて。映画は終盤になってリラとヴォオレタに焦点が絞られる。その関係性が気がつけば変わってくるのだが、その描写はさりげなく控えめ。しかし同時に力強さを感じる演出が素晴らしい。

ここでもある時点からカメラはヴォオレタのみを捉えている。そのことがこの映画のカタルシスに繋がるのだが、それは実際に観ていただきたい。

 

インパクトは「マジカル・ガール」の方が大きかったかも知れないが、今作でもその才能がうかがえる、とにかく好きな作品だった。