ワンシチュエーション、ワンアイディアから生まれる斬新な作品は過去にもあって、ごく最近で言うと『サーチ』、ちょっと遡ると『リミット』映画『[リミット]』予告編 - YouTubeなどがある。
という事で観てきました。
『ギルティ』
予告編→ https://youtu.be/bocuEY3Itsc
いわゆる〝事前情報なして観るべき映画〟〝語るのが難しいからとにかく観て〟系の映画で、実はこの惹句こそがある種のネタバレであって、「最後のドンデン返しがあるんだけど、言えないんだよねー」って言う事自体が既にネタバレだろ!というこの矛盾というか…。
だから気になる人は予告編だけ観て映画館へGOして下さい。
舞台はデンマークの緊急コールセンターのみで進む。オペレーターであるアスガーが受け取る電話或いはアスガーが架ける電話の通話のみでストーリーが構成されている。事件は全て電話の向こう側で起きており、声だけで年齢性別その他を判断するしかない。
声やクルマの音、扉を開ける音、足音、何かを探る音、息遣い…などなど。我々の印象は巧みに誘導されストーリーを紡ぎ出す。そういう意味では主人公アスガーは〝信頼出来ない語り手〟の役割を担っており、この作品は叙述トリック的な仕掛けを生み出す。
しかし、そう言った仕掛けは実はそれほど重要ではない。何となく途中から展開の想像はつかない訳でもない。逆に言えば、仕掛けのトリッキーさだけでは人を惹きつける事は出来ないはずだ。
この作品が90分間観客の緊張を維持し、サスペンスに引き込まれていくのはやはりアスガーの背後にある物語の存在だろう。冒頭の会話のやり取りから彼が何らかの処罰を受けてこのコールセンターに来ている事、明日免責に関する聴問会が開かれる事が推察される。そのストレスからだろうか手は震え、ぼうっとしてしまう事もあるようだ、
そんな彼が偶然受けた緊急コール。次第に事件解決に職務の権限を超えてまで取り組むようになったその動機は明確にはされない。
刑事としての使命感もあったろう。あるいは別れた妻(子供の存在は不明だがあるかもしれない)への贖罪の気持ちがあったかもしれない。いずれにせよ事件の解決へのめり込むアスガーは自ずと自分の過去へ向き合わざるを得なくなる。
やはりここにも赦しと救済の物語があったのだ。
アスガーの行動は果たして英雄的だったのか、単なる有難迷惑だったのか。アスガーは誰かを救ったのか、それとも誰かを傷付けてしまったのか…。アスガーはこの夜、自分と向き合いうことで過去の〝罪〟の贖罪が出来たのだろうか。何かに赦されたのだろうか。
わからない。わからないがアスガーの魂は救われた気がする。少しだけ。
さて。最後にアスガーが電話をかけたのは…誰だろうか?
おまけ アスガーが炭酸錠剤を水に入れて飲むシーン。タクシードライバーオマージュだろうか?