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「本物の音楽をかけてくれ。カニエ以外な!」【映画】『スノー・ロワイヤル』雑感。

清水義範の小説だったと思うんだけど、ハンドルネームの恥ずかしさ、その自意識の塊のイタさをパロディにしたものがあった。「あ。〝キラキラ天使〟さんですか?はじめまして、〝漆喰の闇王〟です」なんてやり取りに笑った記憶がある。で、今実際自分がその罠にハマっているというね。

という事で観てきました。

『スノー・ロワイヤル』

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リーアム、全員除雪!!映画『スノー・ロワイヤル』予告編 - YouTube

いわゆる〝リーアム・ニーソン物〟というか、ハードでダークな復讐劇かと思っていたら、思いのほかオフビートな笑いが散りばめられていた。

〝車の中でスーツ姿の2人がストーリー上関係のない無駄話をする〟というシーンは明らかに『パルフ・フィクション』を意識したものだろうし、シンプルな事態がちょっとしたボタンのかけ違いで混乱し、人間関係が錯綜していく様などタランティーノ風味がある。

つまりは自分の大好物だった。

○○へのオマージュ的な作品は〝鼻に付く〟物になりがちだが、今作はその辺りのバランスが絶妙だったのだろうかテンポも良く非常に心地よい。

序盤は一見、ダークでハードな滑り出し。しかしリーアム・ニーソンがゴツい拳で最初の相手を一発で倒すところで「おや?」と感じ、消えていくキャラクターの〝墓標〟と滝に捨てられる死体という描写が繰り返される流れで、この作品の持つ空気がわかってくる。「これ、笑っていいヤツじゃね?」

先住民族のキャラクターといえば、今までのアメリカ映画だと〝聖なる存在〟的に描かれがちだった。純粋で無垢な存在、現代社会のカウンター的なものとして配置される事が多い中、今作ではそんな呪縛から解き放たれて活き活きとした描かれ方がされているのも新鮮で良かった。それにしても高級リゾートホテルで予約を取ろうとする場面はかなりブラックなギャグで結構怖いやり取りだったんだけど、アメリカ本国ではどういうスタンスで捉えられてるんだろうか。

キャスティングは隅々までこの作品のムードに合っていたと思う。夫との断絶を表情ひとつで伝えるローラ・ダーンは流石だし、ホアキン・フェニックスロバート・パティンソンを思わせるヴァイキング役の人もマスタング役の人も良かった。ヴァイキングの元妻アヤ役の人(ジュリア・ジョーンズ)綺麗だなぁ、と思って観てましたが、『ウインド・リバー』(こちらにも先住民族が重要なキャラクターとなっている。そして雪山での銃撃戦!)出てたんだね。

エイミー・ロッサムも頑張ってたし、〝ウイングマンウィリアム・フォーサイスの軽妙かつ厚みのある存在感も印象深い。

そしてホワイト・ブル軍団の面々。物静かだが威圧感のあるホワイト・ブル。若頭的な存在ながら愛嬌のあるソープ。その他諸々、良い集団だった。正しい意味でのIndian がいるところもまた…。しかし雪山ではしゃぐ彼ら、可愛かったなぁ。

 

オフビートな笑いと泥臭さとクールさがバランスよく融合したアクション、そして落語のようなオチと最後まで楽しめる作品でした。エンドクレジットの遊びも楽しい。

さてと。オリジナル版でも観ますかね。

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