冒頭、波を延々と映し出していて嗚呼最近こういう画面観たぞと思ったらそう『ローマ』だねなどと考えているとモリッシーを演じているジャック・ロウデンの後ろ姿が見えてナルホドくすんだ曇り空はマンチェスターらしさが出ていてってマンチェスター行ったことないけどというのはどうでもよくて映画の話をするけどこの作品はモリッシーがまだモリッシーではなくてスティーブンの頃の話つまりは何者でもない青年の状態が延々と続いていくその姿は俺でありあなたであり自分が何者かである根拠なき自信を持ちながら悶々と生きていくしかないそのジレンマが疲れた身体に染みてくるけど幸か不幸かこの作品はモリッシー非公認で故にスミスの曲は全くかからない流れない訳だけどその製作者たちの苦労はサウンドトラックにも見て取れてニューヨークドールズやロキシーミュージックその他モリッリーのプレイリストを想起させるものであったけどやはり出色だったのはモリッシーが初めてバンドで歌う場面でこれはジャック・ロウデン君なのか誰が歌ってるのか知らないけれどモリッシーがそこにいたと感じるには充分だったし終盤になってようやくジョニー・マーと同じ部屋にいる画面が現れてモリッシー&マーの化学反応が起きる直前のジョニー・マーがギターを爪弾く場面にはやはり感情が高まるしここで「ハンド・イン・グローブ」でも流れれば良いかと言えばそれは益々モリッシーに怒られそうな気もするしとにかくスミスの曲が流れないのは許可がないという事以前にスミス夜明け前の話だからで何者でもない青年達の足掻きを描いているこの作品には必要ないからでその結果として単なるファンムービーになっていない事はおそらく再結成しないであろうスミスというバンドには相応しいのではないかと思ったのでした。