妄想徒然ダイアリー

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この1ストロークで私は生まれ変わる。『7/16(火)フィロソフィーのダンス/奥津マリリ生誕祭』@渋谷TSUTAYA O-WEST 雑感。

もちろん全ての十代が同じ歩幅で歩いている訳ではないし、彼には彼の、彼女には彼女のリズムやテンポがある。

しかし年齢を重ねるにつれてその歩幅や行き先はどんどんど変化し各々の居場所が変わってくる。そんな進学、就職、結婚…etc.というオーソドックスな〝人生の岐路〟を二十代半ば頃から誰しもが感じるようになる訳で…。

 

と言う事で行ってきましたよ!

奥津マリリ生誕祭。

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事前物販に並べたのは17時半過ぎ。最後尾はO-WESTの階段上まで伸びていた。とりあえずシークレット狙いでアクキーと新しいTシャツを買うのが目的だったのだが、なんと途中でアクキーが枯れたとのアナウンス!!残念だが仕方がない。アクキーは他のメンバーのバージョンもこれから公式グッズとして作ってくれるかな?

O-WESTはパンパン。スタッフ氏が再三「あと一歩、一歩前へ」とアナウンスしてくるが、もうこれ以上前へは行けませんというくらいに満杯。

客入れもいつもとは趣きが違いますね。聞き馴染みのない曲も多かったけど、CHARA椎名林檎などおそらく奥津さんの好きな曲なんだな、とぼんやりと聴いていた。しかし、これは単に好きな曲集めました、というセレクションではない事が後に判る。

3分ほど押していよいよスタート。

白い衣装で出てきた奥津さんは登場から眩しくて、オープニングからヲタクを仕留めに来てるな、という感じでフロアをゆっくり眺める。

〝バイバイよりも〟の彼女はいつも以上にセクシーで少なくともわたしはこのライブの間45回くらいは目が合ったような気がしているが、とにかく矢鱈とくちびるを舐める仕草をしていたような気がする。控えめにいってエチエチだったですよ、これは。(と思っていたらLiveの最後に本人が「これからは舌舐めずりを推していく」と発言していて、思わず「ほらね!」と言いそうになった)

昔30万で買ったという藍色のテレキャスを弾き始める彼女はチャットモンチーやバンド時代の曲、ソロ時代の曲などをバンドワゴンのメンバーと共に演奏していく。その姿は素直にカッコいい。「ギター弾いてる時、アゴ出ちゃうんだよね」という奥津さんの言葉は照れ隠しであると同時に、過去へのプライドも入り混じっていたように思う。

MCで彼女が語ったように、同世代の人間達や一緒にバンドをやっていたような仲間達は就職したり結婚したり、あるものは親になっていたり…と彼ら/彼女らなりに人生を歩んでいる。

そのどちらかだけが正しい訳でも失敗な訳でもなくて、それが各々の下した選択であって、つまりはそれが生きていくという事だ。

「わたしは歌う事を、踊る事を選んだ。そしてそれを続けていく」

一語一句は覚えていないが、奥津さんはこう語っていたように思う。そして、それを決断したきっかけとなる曲こそが彼女が最後に選んだチャットモンチーの〝サラバ青春〟だという。彼女の言う青春とはバンド時代の事なのかもしれない。あるいは若い頃に抱いていた甘酸っぱい夢のようなものの事かもしれない。はっきりした事は本人にしか分からないが、いずれにしても「甘えさせてくれる思い出」である過去を象徴するのがきっとこの曲なのだろう。

慈しみつつも、きちんと清算するかのような数分間。それは間違いなく、この日の白眉であった。

歌い出しの瞬間からグイだと引き込まれた。暗転した闇の中でスウーッと思いを込めるように深く息をしてイントロを爪弾くその瞬間の美しさ。やがてバンドとのアンサンブルで湧き上がる高揚感。歌う彼女の瞳は潤んでいたように思うし、時にその歌声が涙まじりであったというのはわたしの記憶違いだろうか。

そして訪れた最後の時、その1ストロークを愛おしむように大事に鳴らした後にステージを去っていく彼女の後ろ姿は颯爽としていた。その背中にわたし達は大きな拍手で応えた。

少し大げさな言い方をしてしまう事を許して欲しい。それがヲタクのヲタクたる所以だ。

まさにこの夜、奥津マリリは再び生誕した。彼女はこの夜、自ら産まれ直したのではないか。過去を慈しみ大事にしつつ、新たな自分を祝福する。そんな夜だったように思えて仕方がない。

その後に起きたアンコールは確かに奇妙な出来事ではあった。構成上、この後フィロのスの4人が出てくるだろう事は自明だったし、奥津さんが一人でアンコールに応えて出てくる事は考えづらい。しかし、それでもわたしはアンコールの拍手に加わっていた。他のみんなもそうだったのではないか。そうせざるを得なかった何かがあそこにあった。

それが何かはあの時は分かっていなかったが、もしかするとこういう事かもしれない。奥津マリリが1時間程の間に繰り広げた過去。それは黒歴史でも消したい過去でもない。その過去は間違いなく今の奥津マリリを作り出していて、決して欠けてはならないパーツの集まりだ。そして、その過去は間違ってはいなかったよ、というエールの表れがあのアンコールだったような気がしている。わたし達はそれを賞賛する。その過去の上に成り立つ奥津マリリを。そしてフィロソフィーのダンスを。

飛び出してきた青い衣装に身を包んだ奥津マリリを見たとき、わたし達は歓喜の声を上げる。ステージに現れたフィロソフィーのダンス。その4人のなんと頼もしく、なんと輝かしいことか!

〝はじめまして未来〟から始まるセトリは奥津さんが考え抜いたものとの事で、なるほど続く〝シャル・ウィ・スタート〟でわたし達を共犯関係に誘い、フィロのスとして初披露の曲だったという〝プラトニック・パーティ〟で原点を振り返る。そういったストーリー性(そう考えると客入れの曲は音楽に興味を持ち始めた頃を表していたのかな、なんて)のあるセトリである事を途中で告白。

おとはすやハルちゃんから「えー!そういう事なら早く言ってよねー」などと突っ込まれる。

ふふふ。こういったフィロのスらしいやり取りが楽しくもあり、同時に尊い。端っこで優しい表情で見守ってるあんぬちゃんとかね。

「次の曲紹介に繋がるMC考えてんの」という奥津さんを横目に「まあ私たちもベストな4人でねー」と身もふたもない発言をするハルちゃんというやりとりもありつつの〝ベスト・フォー〟もまた味わい深く。

言い忘れていたけどこの日の衣装はアラビア風。ジャスミン風のハルちゃんも黄金おとはすも可愛いが、わたしの位置からはお姫様風あんぬちゃんがよく見えて(というよりそういう位置どりをしているわけだが)、しなやかでありつつ力強い彼女の踊りをしばし追いかけていたり。あーかわええ。

〝ラブ・バリエーション〟では奥津さんが「わたしのことを好きな人がー」のところで「全員だよねー!もちろん」と煽る。挙句にはサビのシングアロングのところで「マリちゃんが大好き!」と言わせたりとやりたい放題で、そして、それをステージの4人はもちろんフロア全体が楽しそうにやっていてとてもハッピーな空間だった。

あっという間の1時間半。楽しかったし、奥津さんの歴史(の一部)を垣間見たようで貴重なLiveでもあった。

時間的な事もありこの日は全員握手だけにしておいた。奥津さんにはとにかく「最高でした!」と伝える事しか出来なかったが、そういうわたしの手を両手でギュッギュッしてくるし、あんぬちゃんはいつも通り眩しすぎてロクに顔も見れず(口内炎、大丈夫だったかな)、ハルちゃんには「なんかリスみたい」と言われて「(…リス???)ああ、タイワンリス。問題になってるんですよね」と訳の分からない受け答えをしてしまい、動揺したままおとはすの前に行くとその大きな瞳に吸い込まれそうになるといういつものヲタクぶりを発揮してO-WESTを去っていった。

そして渋谷駅に向かうわたしの脳裏に浮かぶのはおとはすの放った「他界ヲタクを召喚!!!!」だったりするあたりも実はフィロのスというグループの素晴らしいところだったりするのです。