という事で行ってきました。
red cloth 16th ANNIVERSARY マキタスポーツ/眉村ちあき
先行 眉村ちあき
わたしはその直前に流れていたというツイキャスを観ていない。ただsnsなどで目にする情報や彼女のツイートなどから曲作り等においてナーバスになっていることは想像はできた。しかし、それらはバラバラのパーツを組み合わせた答え合わせに過ぎない。そのため彼女がMCで語っていたスランプの話の背景について実感がないというのが本当だ。
ただいくつかの場面で感極まって目を潤ませている眉村さんを観ると感情が揺さぶられてしまうのもまた事実。
特に『ほめられてる!』の前後はかなり心が不安定なように見えて少し心配すらしてしまったくらいだった。それが理由なのかどうか判らないけれど、この夜の〝君とわたしが音で繋がった今日は特別な日って思えるんだ〟という歌詞がかなり印象的に感じられた。心をグッと掴むようなパワーがあったように思う。
『ほめられてる!』のイントロがちょっとスカっぽい感じでカッコ良かったですよね!
同じように「歌詞、忘れちゃった」と言いながら途中で歌うのをやめてしまった『面会』も、もしかしたら眉村さんの中で急にスイッチが入れ替わったのではないか、と邪推してみる。
あのまま『面会』を続けていたら彼女は泣き崩れるほど感情を乱してしまったのかも知れず、自らそれを察知して一瞬の判断で『ナックルセンス』に突入したのではなかろうか。なんて。
この夜のコールは全体的に密度が高く感じた。気のせいかもしれない。多分気のせいなんだろう。眉村さんのライブが久しぶりだったこともあってそう感じているだけかも。でも、それくらいヲタク達のコールや声援に気持ちがこもっていたのかもしれない。
時にシューゲイザーバンドのギタリストのように。
時には満面の笑みを浮かべて
そして肩をクイっと入れて踊る
最後は『インドのりんご屋さん』で締めくくる。
わたしは彼女の心の葛藤は読めない。そんな事は知るよしもないが、しかし彼女が「マユムラー達といるのがハッピーだよ。たまに八つ当たりするかもだけど(大意)」と言う以上、今目の前にあるライブ、その一瞬一瞬を浴びるようにして楽しむしかない。そして、事実楽しい。
もちろんフロアは笑顔だ。
前にも言ったけど、某リーダーが言っていた「笑顔の天下を獲る」というゴールは眉村さんが成し遂げるような気もしている。
後攻 マキタスポーツ
しばらく続けていた禁酒を解いたわたしは、混沌とした状態のドリンク列に根気強く並び生ビールをゲットした。そしてようやく手にした生ビールを一気に飲み干す。そして身動きも出来ないまま、後方の位置でステージを観る事になったが、それはそれで正しい位置だったような気がする。
歌謡曲、Jポップをポストモダン的に解体し笑いに変えていく「オトネタ」のステージは、ただただ楽しい。見覚えのあるネタもあれば、初見のネタもある。そういったネタを観ながら感じるのは、そこで使われる楽曲群が我々聴き手の素養として定着している事に対する小さな驚きだ。
尾崎豊も長渕剛もサザンも西野カナもミスチルもRADWIMPSも一枚もレコードやCDを買ったことはない。特にファンとして好きだったわけでもない。それでもそれらの音楽はあらかじめインプットされている情報のようにわたし達の中にある。だからこそネタが笑えるわけだけど、それって何気に凄い話しだよな、と改めて思ってみたり。
一瞬ここがレッドクロスなのか新宿末広亭なのか分からなくなる。連発されるネタはまさにマキタスポーツという人の才能が溢れかえっていて、ただただゲラゲラと笑う1時間だったけど、そんなステージの終盤に凄い場面が訪れる。しかも2度。
1度目は「キラキラ校歌のコーナー」(勝手につけた名称です)だ。このネタをやる前にマキタスポーツさんはこう説く。
「最近は小学校などにポップスが入り込んできている。しかし本来ポップスとは毒なんだ。危険なものなんです」
そういう意識を与えておいて、まずはオーソドックスなオリジナル校歌を歌う。そして徐々にその校歌はポップス化が進む。つまりは毒性が増していく。最後にはヒップホップからEDMっぽい曲へと変容していく過程でフロアは自然と熱を帯びてくる。手を挙げ、叫び、踊り、身体を揺らす…。そう、ポップスが持つ毒性に感染するように。その光景を後方から眺めていると、このネタが持つ享楽と悪意が表裏一体となっている様に震えた。ぷるぷると。いや、あまりお笑いにこういう表現をするのはよろしくないが、このネタは一筋縄ではいかない深みを感じる。
そして2度目はラストの眉村さんとマキタさんのコラボだ。直前に決めたその曲は、なんと『浅草キッド』!これは素晴らしかった。いや素晴らしいという言葉は適切ではないかもしれない。
もちろんマキタさんと眉村さんとではこの曲に対する距離感、スタンスは全く異なるものだ。しかし、そういった違いも越えてフロア内に響き渡るふたりの唄声はわたしの感情を複雑にかき乱す。途中からは殿の唄声も脳内に響くようになって泣いてしまいそうになる。
最後にはマキタさんと眉村さんの笑顔のツーショットで終了。(写真は撮れず)
いやー良いライブでした!!!!
最後に眉村さんの写真をいくつか上げてさようなら。