妄想徒然ダイアリー

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アナログな身体こそが最先端テクノロジー。『10/26(土)Reframe2019 @ LINE CUBE SHIBUYA』雑感。

Perfumeの印象として「最新鋭のテクノロジーを活かしたパフォーマンス」というキーワードを思い浮かべる人がほとんどだろうし、それに対してネガティブなスタンスを持つ人も一定数いるだろう。

例えばdocomoの5G技術をアピールする事を目的としたこれ。YouTube

東京、ロンドン、NYという3都市にバラバラに存在している3人が最新の通信技術を駆使してシンクロしたパフォーマンスを行う、というこの企画。もちろんとんでもなく離れた地点をタイムラグなく繋げてシンクロさせているのは最新鋭のデジタル技術だ。しかし、このパフォーマンスを成り立たせているのはPerfumeの3人、その生身の身体が作り出すアナログな動きに他ならない。

印象的な場面がある。一連のパフォーマンスを終え、3人が感想を言い合うMCの時間があった。そこでは5g技術を使わない通信システムだったのでそれぞれ数秒のタイムラグが生じている。そこでいつもの「かしゆかです、あ〜ちゃんです、のっちです」をやろうとしてもズレズレでグダグダになってしまう訳で、最初はそれにキャッキャッしていた3人が「じゃあ、そのタイムラグを計算に入れて合わせてみようよ」と即興でトライして見事に成功させていたのだ。「やっぱりdocomoさんの技術ないと大変じゃねぇ」というあ〜ちゃんだったが、奇しくも3人のアナログな身体が産み出すパフォーマンスの凄さを証明する形となったこの瞬間こそがPerfumePerfumeたらしめているもののような気がする。

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という事で全公演全席種応募して何とか1公演当選して参加する事が出来ました。

Reframe2019

渋谷公会堂がLINE CUBE SHIBUYAとしてリニューアルされたその柿落とし8公演、その7公演目に参戦。去年のReframeを観られてないので実に嬉しい。

席は3階席の真ん中あたり。ステージ全体が見渡せてなかなか良い席なのではないだろうか。

冒頭、過去の記憶がコラージュされた映像(あれ?いまBEE-HIVEとか言ってなかった?)が流れる。まさに3人の20年を総括し再構築/reframeする空間なんだな、ということが判る。

やがてステージに3人の姿が現れるがそれが映像なのかどうなのかが一種判断出来ない。ステージそのものも空間に浮かんでいるようにも見えて現実世界の境界線が歪んだような感覚に落ちる。

着席鑑賞というスタイルはLIVEというよりは観劇に近いかも知れない。最初の〝DISPLAY〟終わりに拍手をして良いものか躊躇する空気が客席中に広がり、結局拍手はしないという無言の共通認識がそこで生まれた。

軽く足先や指先でリズムをとる程度の動きはどうしても制御出来なかった(〝edge〟とか無理でしょ!!)が、基本は静かにその空間を体験する1時間だった。

〝FUSION 〟のカッコよさは本日も現在でスクリーンに映し出される3人のシルエットの動きがとにかく素晴らしい。FPツアーでも感じた一見シンプルなのに高いレベルの技術が駆使されているという印象は変わらない。むしろ強くなった。そしてさっきも言ったように、そのパフォーマンスは3人の生身の身体が産み出すグルーヴやバイブスがあってこそ成り立つもので、だからこそわたし達を感動させる。これは何度観ても飽きない。

シングル曲のジャケットポーズ?を取り続けるシークエンスも良かった。延々とタイトルを言いながらフォーメーションを見せる3人の姿がわたし達に与える不思議なエモーション。なんなんですかね、あの気持ち。

あとAポーズで仁王立ちしているのっちをかしゆかあ〜ちゃんが手持ちカメラで撮ってるのは何の時だったっけ?スキャンしてたんだっけな?ちょっと記憶が曖昧に…。

あ〜ちゃんが言うように「変わらないけど変わり続ける」Perfume、それがテーマのひとつだったのかもしれない。最先端のテクノロジーの裏にある地道で時には泥臭くもあった歴史、その積み重ねが今のPerfumeを産んでいる。というのはややセンチメンタル過ぎるかな?いや、でもホントそうだと思う。

終盤に向かって段々と演出がシンプルに研ぎ澄まされていったのも面白い。〝DreamLand〟の時のオーロラのようなカーテンは、それが布のカーテンなのか映像処理なのか判別できないほどだったが、いずれにせよシンプルな画とダンスと歌という演出になっている。ちょっと記憶が曖昧だけどヴォーカルも処理少なめだったような…。レベル3ドームツアーの神々しいラストを想い出したり。

あともうどの曲だったか記憶をなくしてしったけどミラーボールとレーザー光線も凄かったな。シンプルでありながらも濃密な光の交差する空間。

そしてラストの〝challenger〟の若々しさ。先祖返り的なこの曲。ゴリゴリのEDMではなく原点のテクノポップとでもいうようなこの曲をラストに持ってきた事にも意味があるように思えて仕方がない。まるでこれからデビューするアイドルグループのようなフレッシュさのあるこの曲をベストアルバムの冒頭にそして再構築と銘打った公演のラストに持ってくる事の意味。それはこれからのPerfumeが変わらない何かと変わっていく何かと共に進んでいく宣言とある種の覚悟の現れだと思う。

公演のラストに堰を切ったように巻き起こった万雷の拍手とそれを浴びる3人(特にあ〜ちゃんは手を広げてそれを味わっていた)はその表情こそはっきりとは見えなかったけど、頼もしさすら感じる凛とした立ち姿だった。

公演通りから渋谷の駅まではハロウィンでたくさんの人で溢れていた。その雑踏をそれほど苦に思わなかったのは、この公演を観て気持ちがデトックスされていたからだろうか。それとも、祝祭空間が渋谷の街まで拡張されたのかもしれない。なんて。

 

余談

公演のおまけとして行われたあるテレビ収録。内容については言えないけど、その時間は実にほっこりと微笑ましいもので、Perfumeの歴史があったからこそ生まれたモノ、大袈裟に言えば伝承の一端を垣間見たような気持ちもあった。