もちろんアイドルやスポーツ選手に過剰なストーリー性を求める事は正しいとは言えず、とはいえその誘惑は甘くなかなか抗えないのもまた事実。
それを理解はした上で言わせて貰えれば、彼女達を巡る様々は、成長物語の要素としての「苦難」や「乗り越えるべき壁」という言葉で括るには余りにも…余りにも……。
という事で行ってきました。
「私立恵比寿中学 バンドのみんなと大学芸会2019」
それなりに師走らしい忙しさでなかなかフルに休みをポンポン取れるわけでもなく、半休という形で仕事帰りに参戦。Ebichu's FULL BATTERY SURROUND というサブタイトルのある今回はフルバンドセット。ホーン隊やバイオリンなどもある体制でなかなか楽しみ。
さて。
ここからはネタバレなどあります。
スクリーンに映し出されるメンバーカラーの照明。そしてシルエットと共に始まるオープニング。あれ?最近これどっかで観たぞ?
冒頭から五五七二三二〇の曲というなかなかの変化球だ。スクリーンがバサっと落ちると〝family complex〟が始まる。ここ、カッコ良かったですね。
狭いスタンド席ではあったがブヒブヒ言いながら、エビ中LIVEが始まった事を実感する。あ、そうだペンライト出さなきゃと鞄から光る棒を取り出し水色を点灯させてみたものの、不格好に上げ下げしているだけの自分に嫌気がさして一度引っ込めてしまった。
わたしが再びペンライトを手にしたのは〝放課後…〟の時だ。割とすぐでしたね。冒頭のシャウトは真山さんとりったん。そこに安本さんの姿はない。しかし、わたしはりったんのシャウトに心を震わせられることになる。
言われてみればぁぃぁぃの代わりにそのシャウトを担ってたのは彼女だったか。わたしが実際にその姿を観たかどうかは記憶が曖昧だが、おそらく当初は「苦しそうに歌うりったん。頑張れ!」的な視線を送っていたと思う。
しかし、この夜の彼女は違っていた。この曲に限らず自信をもってステージに臨んでいるように感じる。もちろん、上達した歌唱力もその自信を成り立たせる要素のひとつだが、それ以上にエビ中というグループを引き上げていこうとする強い意志がわたしには見えてきた。そう簡単にこの船を沈ませない、そんな思いがあるという全く持って勝手な妄想にほかならないが、しかしそう思わせてしまうだけのサムシングを彼女は獲得している気がしてならない。
新曲〝愛のレンタル〟や〝シンガロン・シンガソン〟そして〝紅の詩〟などなど、パートの多寡に関係なくグッと引き込まれるようなフレーズがわたしの心を射抜く。
いやもちろんりったんばかりを観ていた訳ではない。みんな本当に歌が上手くなった。真山さんやひなたちゃんは元々のポテンシャルを高めてレベルアップさせているし、美玲ちゃんの表現力も素晴らしい。そしてぽーちゃんの伸びやかで特徴的な歌声も今のエビ中をリードしていくパズルのひとつとして印象的だ。
LIVEも中盤になった頃、ちょっとしたブレークタイム的にモニターに流れる映像。公園のような場所にいる誰かの足元とエビ中ちゃん達のリハーサル風景がカットバックされていく。
やがてその誰かが誰であるかは明かされる訳だけど、途中である程度の想像はついたものの彼女の姿が映し出された時は思わず息を飲んだ。
軽々しく「元気になった」とかあるいはそうでなかったといった事を言うつもりはない。しかしそれでも彼女の姿をこういう形でわたし達に見せた事については、今のエビ中を巡る状況を「悲劇のストーリー」にしないという運営の意志を感じた。ややセンチメンタルな言い方を許してもらえるならば、6人の繋がりを感じさせる演出としては良かったのではないか。
このコーナーでは5人は椅子に座って歌声をしっかりと聴かせる。いや何度もいうようだけど本当にみんな歌上手くなったなぁ。〝曇天〟、最高でしたよ。
そうこうしていると、エビ中に入った頃と思われるメンバー達の自己紹介映像が映し出される。みんな小さくて幼いが、彩花ちゃんの独特の間は(当たり前だけど)この頃から出来上がっていたんだな、と感心してみたり。最後はかほりこの初々しい様子が(結構長めに)流れる。ほっこりすると同時に時の流れと2人の成長に言いようのない感情が沸き起こる。このふたりが将来このチームをグイグイ引っ張る頼もしさを発揮するようになると当時イメージ出来ていた人間がいただろうか?
そして、そこから始まる〝HISTORY〟は…あれはズルイ。隣の女の子はズルズルに泣いておりました。
後半は新旧織り交ぜたアゲアゲ系の曲が中心。〝フレ!フレ!サイリウム〟ではトロッコで会場を回ってきてくれたものの、わたしの位置からはほとんど見えなかった。でも、こういうLIVEも久しぶりだったので、それだけで楽しい。
〝PANDORA〟のベビメタや〝オメカシ・フィーバー〟のハロプロといった雑食的な楽曲づくり、そのバラエティ感もエビ中の魅力かもしれない。〝サドンデス〟ではバンドメンバーも巻き込んだ遊びもあった上で、「立ち上がれ!私立恵比寿中学ーーーー!」になだれ込むカタルシスを堪能。本編ラストは新譜『playlist』の中でも個人手に大好きで新たなアンセムとなりそうな〝ジャンプ〟で締め括られた。わたしはアルバムを聴いている時から終盤の「今だーーーーー!」はりったんだと思っていて、事実この日のLIVEでも彼女がそのパーを担当していた訳だけど「あのパートは本来、彩花ちゃんだよ」とブラックタイガーの人に教えられてちょっとした驚きを感じたり。
アンコールではこれも大好きな〝ポップコーントーン〟(そういえば新譜、たむらぱんさんの曲なかったなぁ)が観られたし、オーラスの〝感情電車〟では、ぽーちゃんの更なる成長をビシバシに感じながらステージを眺めていたけど、やはり5人で連なって電車になる場面をみると「少ないな」と思ってしまい不在の存在を強く意識してしまう瞬間がちょっぴり寂しさも増幅させて、でもそれはこの楽しかった夜の締めくくりには相応しかったのだろう。
いくら大好きでいたとしても、いつかは消えてなくなるかもしれない。永遠なんてないし推していたものが目の前から去っていってしまう覚悟をわたし達は持っている。だからわたしたちに出来るのは、ただ身体を委ねる事だ。そう、踊っていればいい。踊っていられるのなら幸せなんじゃないかな。