妄想徒然ダイアリー

映画と音楽とアレやコレやを

一瞬の為に手を掲げるのだ、わたし達は。「Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」を巡るあれこれ。

普段なら高揚した様子で参戦に関してバンバンSNSにタグ付けて投稿したりするところだが、そんな気分にもならず。そもそもLIVEの日が近づいても東京ドームに行くことについてもグダグダと悩んでいて気持ちが定まっていない状態が当日まで続いていた。

本来、わたしにとってPerfumeのツアーに参加する事は必須事項であり、そんな逡巡はあり得ない筈だ。今回のツアーは遠征もせずに東京ドームの2公演に目標を定めていて、もちろんチケットを購入してから約半年楽しみにしていたにも関わらず、下手をすると延期や中止を願っていたりする始末。

そこには様々な思いがあって、正常バイアスによる楽観的な気持ちもある一方で、何より3人が(あらゆる意味で)危険に晒されたり悪意のやり場としてスケープゴートにされてしまう事を受け入れられないという気持ちもあったように思う。SNSには極端な絶望と悪意、或いは根拠のない楽観が溢れている。そんな中で「安全対策を取りながら開催。来なかった場合には返金に応じる」というのはあの時点では現実的な対応だったと思う。おそらく業界の中での政治的な駆け引きや調整によるコンセンサスはあったはずで、他のアーティスト運営も同じようなテンプレの案内文を使用している事がそれを語っている。

そうこうしているうちに千秋楽の2/26(水)には仕事の都合で行けなくなってしまった。多分いつもなら強引にでもスケジュール変更したと思う。それをしないでいたのは、どこかに行かなくて済む理由を第三者に押し付けていた面もあった筈でそんな状況にある自分に苛立ってもいた。

そんなモヤモヤと霧がかかったような気持ちで向かった東京ドーム。物販列には人が溢れていていつもと変わらない光景のように思えた。マスクをしている人もいればしていない人もいる。コンコース内の各所にはアルコール消毒剤が置かれている。

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入場してLINEチケットで発券すると何とアリーナだった。しかも割と前方で、これほど近い場所も久しぶりな気がする。正面には見覚えのある1から11までの数字が並んでいた。その数字は上手側にも続いているようだ。

開演30分前で、わたしの周りは席が埋まっていなかった。平日の18:30開演とは言え1列ほぼ空席状態だった。結局、開演までにはわたしの列は埋まる事にはなるのだが、別な場所には空席もある。しかし極端に空席が目立つというほどではなくキャンセルして来なかった人の割合はそれ程ではないように思える。

開演前に場内モニターに流れるPerfume関連のCMに混じって、ウイルス対策の案内がデカデカと表示されていたのをぼんやりと眺めながら、ツアーTシャツに着替えタオルを首にかけた。それでもわたしの中で高揚感はまだ訪れていない。ケープCMの3人のカッコ良さを観ても、どこかいつもの空気とは違うものを感じていた。影ナレが始まり手拍子が起こっても薄皮一枚を隔てているような感覚があった。それはマスク越しである事に無関係ではないだろう。

そしていよいよLIVEがスタートする。そして…。

一曲目〝GAME〟が始まった瞬間、わたしのモヤモヤは全て吹き飛んでいった!!!

この瞬間を思い出すと今でも涙が出そうになる。何が正解かはわからない。もしかしたら間違っているのかもしれない。それでもあらゆる感情を、それは悪意でさえも受け止めるような覚悟をステージに立つ3人から感じた。であるならばそれを受け止めるしかない。ライトセーバーで闇を切り裂く姿は、この世の邪悪なものを追い払うようにも見えた。

〝Spending all my time 〟も〝Dream Fighter 〟も過去の想い出が頭の中に駆け巡るのは、わたしの脳内変換だったのかモニターに何か映っていたからだったか。その記憶が混濁している。

この時点でベスト盤のツアーである事を再認識する。Perfumeの3人、そしてわたし達の中に蓄積されているメモリーが解きほぐされそして再生される。〝レーザービーム〟で飛び交う光線をアリーナ前方にいたわたしはほとんど浴びてないけれど、スタンドからの光景を観てみたくなる。どの場面だったかレーザーが不思議な屈折の仕方をしていたような気がする。さりげないようで複雑なテクノロジーなんじゃないかと思うがよくわからない。

最初のMCで「今日は来てくれてありがとう」というあ〜ちゃんの瞳は潤んでいて、それはいつも通りと言えばいつも通りだけど、それでもやはり現状が反映されているようにも感じてこちらもグッと来てしまう。のっちの煽りやかしゆかの「名古屋でグッズの傘買ってっていってたら…今日、雨!」のくだりを観ているといつものPerfume LIVEに来たようで安心する。あ〜ちゃんのコスプレしているお客さんに「それいつのあ〜ちゃんだっけ?STORY?」とか言ってたのっちとかしゆかだったが、休憩から戻ったあ〜ちゃんが「さっきparty makerのコスプレの人、おったじゃろ」という一幕も流石でありました。

〝だいじょばない〟はサマソニ前夜祭のソニマニで観た時に「あ。Perfumeのステージがワンランク上がった」と感じたという想い出がありコミカルさとカッコ良さが同居した大好きな曲で、この時だっただろうかステージで踊る3人の影が舞台後ろの壁に映るのがわたしの位置からは見えて、その影さえも素晴らしい。

嗚呼、そして〝SEVENTH HEAVEN 〟よ。まだ前半ですよ、贅沢なセトリ。

メドレーコーナーはどれも当たり前に素晴らしいけれど特に〝Baby cruising Love〟(→白いランプを持って廻るわけゆかを観よ!!https://youtu.be/gYaxQYf_EdI)と〝NIGHT FLIGHT 〟が印象的だった。モニターに映る過去映像がエモい。エモ過ぎる。しかしこのエモさは後に訪れるあの曲の時に頂点に達する。

さて「MUSIC by 中田ヤスタカ」と共に始まる後半。ポリゴンの3人の姿。10人のかしゆかっぽい所も一瞬あったような気がするがよくわからない。それにしても今回、モニターの解像度良くなかったですか?遠くても本人の姿を観ることが多くモニターはそんなに確認しなかったけど、チラッと見に映る3人の姿は鮮明でスタンドからの眺めもまた違ったものだったろうと想像する。

そして上手中央下手に分かれてキューブ?に乗って現れる3人。

〝edge〟だ!!!!!

わたしのすぐそばの通路をのっちが通り過ぎていく。まっすぐに正面を見据えて進む姿が眩しい。ゆっくりと進んだキューブはやがてアリーナ中央で一つになり、そして最終的にはトライアングルのステージを形成していた。ように見えた。ここもスタンド席から確認してみたい。

そのまま出島的ステージでの〝再生〟は、後ろから観る形にはなったがキョンシーダンスが可愛い。

PTAコーナーであ〜ちゃんが観客の職業を訊く恒例の場面では弁護士、社長はあったもののお医者さんがなかった。もちろん意図的な事であって、その事と明るくなった場内でスタンドがぎっしりとマスク姿の人で埋まっている様子を目の当たりにして、一瞬現実に引き戻されもした。しかし、それは避けられない事でその状況の上でこの空間を受け止めていくしかない。そんな事を「出来るかな、はてさてふむー」と言いながらボンヤリと感じていた。

そしてその後に続いた〝Party Maker〟では紅い衣装に早替えする3人。いつもなら豊穣の祈りのような祝祭空間という意味合いを感じるこの曲だが、この夜は厄災を追い払う踊りのようにわたしには感じられた。いやそう思いこもうとしていたのかもしれない。そう思う事でわたしの魂は少しだけでも救われた気になっているだけかもしれない。もちろん、それはわたしの自己満足に過ぎない。それでもキューブに乗ってメインステージへ戻っていくあ〜ちゃんに手を振りながら、わたしはあらゆる厄災が消えていく事を願っていた。

〝パーフェクトスター・パーフェクトスタイル〟でチルアウトしつつ感情が昂る中での〝ポリリズム〟は最早反則とも言えるものだった。

モニターに映し出される数々のポリリズム。過去と現在が溶け合うようなクラクラとする時間は格別としか言いようがない。当たり前のように映像の3人と今ステージにいる3人の動きがピタリとシンクロしている事にもグッと来てしまった。何度も何度も何度も聴いて観てきたこの曲が、こういった形でこちらの心を鷲掴みにするとは正直予想してなかった。

いよいよ最後の時がやってくる。

「いい?一回しかやらないからね!」というあ〜ちゃんの言葉だけで泣けてくる。あの日あの時のさいたまスーパーアリーナ。わたしのPerfume史でも思い入れの強いあの時に掲げた手。その手が一瞬しかない、2度とないこの日この時に繋がる。せーの!っという掛け声と共に掲げられた多くの手のひら。ぱっぱっぱ、カッコカッコカッコ、1、握って321…。このツアーのセトリが〝MY COLOR〟で締め括られたのは、わたし達のそしてPerfume3人の信頼と愛を確信する儀式だったのかもしれない。

最後のMCでかしゆかは左右に分かれて配置された数字になぞらえて、これからも続いていく年月について語った。のっちはPerfumeである事そして2人への愛を語りながら目を潤ませていた。そんなのっちの言葉を聞きながら涙ぐむかしゆかにもグッとくる。そしてあ〜ちゃんは、ここまで続けてこられた奇跡を語りながら、これからも続けていくことを決めた、と宣言した。

ポリリズムの花火、その火薬の匂いがしたのは一瞬で勿論わたしの鼻からは既に消えている。でもその香りの感覚は今でもしっかりと残っている。つまりはそういう事だ。