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食べ方の汚い奴は酷い目にあう。【映画】『悪人伝』雑感。

もはや◯◯(国名)映画というジャンル分けはそれほど意味は為さず、どんな国で作られた映画だって良いものもあれば良くないものもある。というのは当たり前の話ではあります。

という事で観てきました。

『悪人伝』

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予告編→https://youtu.be/H5D9MMI7A8A

いやあ、噂に違わず面白かったですね。割とハードル高めにして劇場へ向かった訳だけど、展開のテンポの良さとアウトレイジ感満載のテンションの高まりがうまくマッチしていて最高でしたよ。マ・ドンソクの圧倒的な身体の存在感とナイフで刺しても車で轢いても死ななそうなバイタリティを目の当たりにすると、なるほど虜になる気持ちもわかる。そして彼以外のキャストがそれぞれ魅力的で出番の少ない役柄(サンドの側近とか)でも強い印象を残している。見慣れない顔が多いのでどうしても知っている顔(武井壮とか山口馬木也とか伊勢谷友介とか)に当てはめてしまうのはまあ仕方ないとして。

そりの合わない兄弟分の存在や歯にまつわる罰の与え方、あるいは車を真上から捉えたショットなど『アウトレイジ』を想起させる部分はあるが、アクションにおいて拳銃は一切使われず、殴る蹴る投げ飛ばすといったフルコンタクト系で押し切っている。それはもちろんマ・ドンソクの圧倒的身体の魅力を発揮するのに充分であった。

そして画面のルック、その豊かさについても指摘しておきたい。主張の強い気をてらったカットがある訳ではないけれど、照明の使い方や色使いがとてもスマートですごく良かった。あと劇伴も素晴らしい。音楽、カッコよかったなあ。

型破り的でやさぐれた刑事とヤクザのボスとが構造的同盟を結びながら〝ひとつの敵〟に向かっていく様子には、ストレートにグッときてしまう。と同時に〝それぞれのルール〟における落とし前の付け方とどう向き合っていくかそのスリルもまたわたしの心を掴む。

テソク刑事と組長ドンス(とそれぞれのチーム)の関係性がウエット側に張り切らずに絶妙なバランスを取っているのも独特の緊張感を作りだしていて効果的だった。互いの境界にそれぞれ足を踏み入れながらも最終的にはそれぞれの矜持を(ある意味手段を選ばずに)守ろうとする姿に引き込まれていく。

この両者の距離感、関係性が絶妙で良い。テソクがある意味ドンスの引力に引き込まれるように引っ張られながらも、刑事である事はやめない。つまりあくまでも法的手段によって犯人を裁こうとする点は譲らない。その点は譲らないが、しかし法的手続きを成立させる為に手段は選ばない。だからこそドンスとともに「地獄に落ちる」ことも厭わない。そんな修羅の道を進むという選択。

こうなってくると善悪の境界線はあやふやになっていく。法によって裁かれ法によって護られる罪人にどうやって落とし前をつけさせるのか。そして迎える結末のカタルシス

という訳で、良い映画につきものの「またアイツらに会いたい」感を抱きながら劇場を出て、ケジャンでも食べながら酒をかっくらいたいくらいの気分だったけれど、それはまたの機会に。