次々とハリウッド大作が公開延期になるご時世、兎にも角にも劇場公開してくれた事が嬉しい。かつてのささやかな日常の場面がいかに有難い事であったかを実感するのです。
という事で
予告編→映画『ワンダーウーマン 1984』日本版予告 2020年12月18日(金) 全国ロードショー - YouTube
という事で贅沢は言わないけれど、正直前作と比べるとちょっとカタルシスはない、かな。
「為の演出」というか良くないパターンのご都合演出がちょっと気になるといいますか…。「細けぇこたぁ良いんだよ!」が通じる作品もあるしそういうのも大好きなんですが、今作はその点が目についた。その辺りの線引きって自分でもよく判らなくて、例えば『バトルシップ』なんかだとそういう瑕疵は全く気にならないんだけど、今作は…。
ていうか今回ダイアナ、あんまカッコよくないんですよ、全体的に。その辺がちょっとモヤってる原因かもしれない。
いやもちろんグッと来る場面もある。飛雄するダイアナに心掴まれる一瞬とか切ない表情とかね。前作ではひとつの目標に向かって仲間たちをグイグイと引っ張っていく頼もしさがあったし、怒涛の強さ・カッコ良さがあったのに今回ではそれが余り感じられない。
もちろんそれはストーリー上の必然ではあるし、こういう続編にありがちな主人公が葛藤やハードルを乗り越えての覚醒のパターンなのは判るんだけどもう少しスカッと抜けた勢いが欲しかった。
寧ろバーバラやマックス・ロードの方にキャラクターに深みがあるしむしろ共感すらしてしまう。冴えない自分の人生を何とか輝くモノにしたいと足掻き、その欲望に抗えずダークサイドに堕ちていく様はわたし達の姿でもある。
この作品で痛快さを感じるのが、バーバラが酔ったゲス男性をぶちのめす場面(この時のスコアが流石ハンス・ジマー!!って感じで好き)で、今までの人生をひっくり返していくことへの快感に支配されていく姿には不思議な共感を抱いてしまう。
いっそバーバラのストーリーに重点置いた方が面白かったんじゃないですかね。わたしはDCコミックに詳しくないのでチーターというキャラクターの存在は知らなかったけど、こういうルサンチマン的に増幅していくキャラクターは嫌いじゃない。
マックス・ロードの方も、不遇の子供時代からそれこそ泥水を啜るようにしてのし上がって行こうとする描写(会社立ち上げのところ!泣きそうになりました!)とかグッとくるところがあるし、欲望のインフレに囚われていく不気味さのようなものもあって良かった。ちょっとトランプ批判に引っ張られてる気がしないでもないけど。
それぞれクリステン・ウィグとペドロ・パスカルがとても良かった。ペドロ・パスカルについては『マンダロリアン』のシーズン2最終話を観たばかりでその感動に包まれた状態だったこともあり、「マンドーさん…どしたん?」という複雑な心境で観ていたりもして。
とまあ色々と思うところはありましたけれど、最初に言ったように今この時期に劇場公開された事がありがたく、それだけでも感謝したいという心境なのは本当。ファッションだけでなく画面のルックや肌触りも80年代的空気を感じさせる仕事ぶりも悪くない。チラリと映る渋谷は90年代っぽく見えたけど、まあそれは小さな話で何よりわたしが感じたのは「ブルー・マンデー」流れねぇじゃねーか!!!という事だったりするのです。