妄想徒然ダイアリー

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暗闇で踊る事を許されたわたし達は。『Singularity 9 フィロソフィーのダンス×the peggies』雑感。

思わぬ異動で今までと業務がガラリと変わった部署になり、何かと胸がざわつく今日この頃。なかなか好きな人たちの動向を追いかける事もままならず、色んな情報から取り残されているような気もする。

『Singularity 9』

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もちろん開演時間に間に合う訳もなく、LIQUIDROOMに到着するとthe peggiesさんの演奏はすで始まっていた。入り口でお目当てのグループを告げて、600円を払ってドリンクチケットを貰う、そんなルーティンもいつぶりだろうか。

入場するとフロアは人でいっぱいだ。床面にはグリッドが作ってあってそれぞれの枡に人が立つ事でディスタンスを取られるようになっている。

しかし、そんな事はどうでもよくて遅れて来たわたしは後方に位置する訳だけれど、響くベース音やドラムが刻むビート、そしてギターの音色が身体に直接ぶつかってくる。そう、これがLIVEだ。

暗闇の中に閉じ込められ、グリッドの中からハミ出す事は許されていないが、それでもわたし達は踊る事が出来る。このご時世の中で、それはある意味背徳でもあり、だからこその快楽でもある。スリーピースバンドの疾走感ある曲に身体を揺らしながらそんなことを考えてみる。

目の前に立つ長身の男性の背中にはベルベット・アンダーグラウンドの曲名がズラリと並んでいて、よく見ると加茂さんだったが、そんな風にしているうちに暗転からお馴染みのあの音が流れてLIVEが開幕した。

ステージに現れた4人は新しいアー写、というかカップラーメン・プログラムの衣装だ。告知されていた通りおとはすは椅子に座っていて、ステージ下手までコロコロと運ばれている。

一曲目が『ダンス・ファウンダー』であるのはとても正しいような気がする。久しぶりのスタンディングLIVEで、もちろんかつてのように声を出すことも出来ないが、そんな状況だからこそあのイントロが流れた時、わたしは踊る事を許されたかのような気持ちを抱いた。ここにいて、良いんですね?と。わたし達、集まってLIVE観てて、良いんですよね?と。ところで最近ハルちゃんのフェイクが「ダンスをーいえー」パターンから「ダンスをををををををををををを」パターンに先祖返りしていて、いやそれはそれで良いものなのです。

『ベスト・フォー』では曲中おとはすが下手から上手側まで運ばれていて、いやもちろん彼女には色んな想いがあるはずで余り軽々しく言うのも如何なものかとは思うけれど、そこに悲壮感なんてものはなくて、この4人だからこその明るさに溢れていて曲ともすごくピッタリだった。楽しい。

椅子に座っての『パレーシア』から『シスター』の流れは配信LIVEを思い起こさせるラグジュアリーな時間だった。今すぐFNS歌謡祭に出てください。ハルちゃん&奥津さんの艶っぽいボーカルはもちろんのことおとはす&あんぬちゃんのコーラスもまた心に沁みます。

LIVEで新曲を披露してくれたのも嬉しい。『テレフォニズム』は紹介の時に言っていたように振り付けも楽しいし、曲も上手く説明出来ないけど、何というか身体にしっくりくる感じが良い。曲中に電話のベル音が鳴る曲に外れなし。サンプルないけど。

そしてバンドセットの『オプティミスティック・ラブ』の祝祭感よ!声を出す事も激しく動く事も制限されていたけれど、間違いなくわたし達はあのフロアで踊りまくっていたし、空からは金銀のテープが降り注いでいたようにも思える。途中、あんぬちゃんがドラムの方に近づいて行った時にはもしかして(サマソニでのレディ・ガガのように)シンバルでも叩き始めるんじゃないかとちょっと期待したけれどそんな事はなかった。

そしてLIVEの締めくくりが『ライブ・ライフ』だったのも圧倒的に正しかった。もちろん、現場に来る事だけが唯一の楽しみかたではない。様々な状況がそれを許さないケースなんて山ほどある。正直なところ、わたしだって少し二の足を踏んでいたところはなくはない。予想以上に年度始めの仕事のため心身ともにキテいる状態で、色んな意味で健全なメンタルではなかったし、事実残業で行けなくなる可能性だってあった。

しかし結果としてLIVEに参加できたのはとても良かったし、「もしかしたら、これが生きるって事かもしれない」とこの曲を聴いていると思ってしまったりもした。ちょっと大袈裟だけど、そんな事を口走るくらい疲弊しているのかもしれない。でも、これは冗談でなくLIQUIDROOMを出る頃にはわたしはかなり元気になっていた。区切られたマスの中で小さくだけど踊る事を許され、楽しいLIVEを観る事で心の何かが刺激されたし、ずーっとお腹の底にあったモヤモヤとしたモノが消えたような気がする。

思わず、恵比寿横丁で一杯引っかけたくなるほどだったが、それはまた別の機会に。