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タイムふろしきでは解決出来ない。【映画】『オールド』雑感

たまたまCSで流れるドラえもんを観ていたら、のび太無人島に行っている回で、ああそういえばそんな話あったなぁ…と思いつつラストになって思わず「えええええええ!」と声を出してしまうくらい驚いてしまった。

子供の頃、多分原作を読んでいてその時には違和感を感じていなかったのか、感じていたけどその事すら忘れてしまっていたのか記憶も曖昧だけれど、「いや、それで…良いんですか???」という衝撃があった。

人が急速に老化する奇妙なビーチ…M・ナイト・シャマラン監督『オールド』日本版予告編 - YouTube

『オールド』

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タイトルバックからもうカッコいい。あれ?こんな洒落た事やる人だっけ?と思いつつもそれだけで期待値がグングンと上がる。

んどけど、その前に。わたしが観た劇場では本編前にシャマランが出てきて「ではお楽しみください」的な事を言う映像が流れたんだけど、これシャマランにやられるともうそれすら作品の一部か、と思ってしまうような異化効果がありましたね。

導入部から、わたしなんか唸ってしまう。聡明な弟、自分の事より周囲のことを気にかける姉、穏やかな父と少し影のある母、という人物像が最初の1シーンだけで表現されていて、上手い。

どこか不安な気持ちになる人物配置や画角も素晴らしく、撮影のマイク・ジオラキスは「スプリット」や「ミスター・ガラス」でシャマランと組んでいる人で、シャマラン世界に巧みに誘導するような効果もあった気がする。時に美しく時に不穏なムードを映し出すビーチの風景を捉えたショットの数々を観ているだけでアドレナリン分泌される。

ミステリーの仕掛けは割と序盤から比較的わかりやすくヒントが張り巡らされているし、種明かしの部分はそれ程重要でもない。もちろん、その展開は飽きさせないし、所謂シャマラン節的な面白さもキープされているし、カタルシスもある。このコロナ禍だからこそ響いてくる場面もあった。

しかし、それよりもわたしを捉えたのは別な部分だ。ビーチに集まった人物がそれぞれ抱える問題は、ホラーになったりコメディになったりしながらわたし達を混乱と恐怖に巻き込む。そして、物語は次第にある一点に視点がフォーカスされていく。

そこに立ち上がっていく赦しと救済の徴にわたしは心動かされる。老化し心身ともにあらゆるものを失っていくなかで、同時に壊されていた関係性が修復されていく。それが本当に幸せなことかどうかなんてわからないけれど、そこでガエル・ガルシア・ベルナル「美しいビーチじゃないか…」と呟く場面は素晴らしかった。そこであらゆる厄災が昇華されていくような気持ちにもなったけれど、多分それは間違った感情なのかもしれない。

という事で聴いていただきましょう「ワンス・イン・ア・ライフタイム」。

Talking Heads - Once in a Lifetime (Official Video) - YouTube