妄想徒然ダイアリー

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こんな時だからこそ、手を繋ごうか。『私立恵比寿中学 10th Anniversary Tour 2022〜drawer〜7/9(土)LINE CUBE SHIBUYA』雑感。

前日の出来事で心にこびりついた暗澹たるモノは完全に消え去ってはいなくて、あえてニュース番組などは見ないようにして気軽に笑えるバラエティを見たり、iPadでイラスト遊びをしたらして心の平穏を保つ必要があった。

そういう意味では、こんな時だからこそ、という気持ちで渋谷に向かっていたかもしれない。f:id:mousoudance:20220709212549j:image

LINE CUBEは2度目だけれど、こんなに席狭かったっけ?という印象。しかし、後ろの方からでも観やすくて良い。これくらいの規模でエビ中を観られる機会もそうそうないだろう。

6月の時はかなり前方だったけど、今回は中央あたり。程よくステージ全体が観られるのでこれはこれで良い。(とか言ってたらこれがとんでもない神席だったという)

「全力ランナー」、「シンガロン•シンガソン」、「仮契約のシンデレラ」、「さよなら秘密基地」と続く最初のブロックは東京ドームシティホールの時と同じようだ。前回、コンディション上の理由で歌唱のなかった真山さん(それを全然感じさせないパフォーマンスだったけれど)の声もしっかりと耳に届く。

「きゅるん」は初めてパフォーマンスを観るはずだけれど、何故かそんな感じがしなくて恐らくそれはこのツアーの中でエビ中としてのパフォーマンス〟が完成していることの証なのかもしれない。そして、個人的に待望していた「トキメキ的終末論」!予想通りライブでその魅力が爆発する曲で、その明るさと共にアジテーションにも似た感情を掻き立てるようなパワーがある。うん、素晴らしいですね。

MCコーナーでは、やはり小久保さんがイジられている。独特のマイペース感が良い空気を作り出しているようで、思わず「今日はアルバムの曲、全部やります」とネタバレをかましたりしても、ほんわかと許容してしまう。何というかこういうのもエビ中らしさ、と感じる。

かほりこコンビによる茶番も実に楽しい。桜木さんが特攻服風衣装で出てきたりして、遊び心があるけれど、そこからの「I'll be here」や「愛のレンタル」といったカッコよさへ繋がる落差もまた魅力のひとつ。いや、それにしてもアカペラから始まる「愛のレンタル」は何度観ても良いモノです。と、しみじみしていたら「未確認中学生X」ですよ!高いステージに位置しポーズを決めるかほりこ!!!!の姿だけで色んな感情が身体中から湧いてくる。 久しぶりでずっきゅんずっきんのところの振り付けも忘れていたけれど、いやニクイセトリですね。

ユニットコーナーの「でかどんでん」の始まり方がやっぱり好きで(今回は柏木さんスタート。悪戯っぽい動きも可愛いし、4人の猿?ゴリラ?的動きで『2001年宇宙の旅』の冒頭シーンを思い浮かべたのはわたしだけだろうか?)、やっぱり最初のパートが「踊るロクデナシ」のトラックのように感じるんだけど、違うのかしら。そしてユニットコーナーから「夏だぜジョニー」へと流れる瞬間も好きで、舞台袖からほかのメンバーがそろりそろりと出てくるあの雰囲気が良いんだけど、いやしかし今回は柏木さんに持ってかれました。気がついたら宇宙人グレイと二人羽織状態の彼女にばかり見ていた。

さて。白衣装に着替えていよいよライブも終盤は近づいてきている。「ハッピーエンドとそれから」が終わり、「宇宙の砂時計」が始まった時にわたしの目の前にぽーちゃんがいた。1〜2m先の通路で彼女は歌っていた。ふと視線をズラすと桜木さんもいる。反対側には真山さん。右奥にいるのは小久保さん?一瞬何が起きているのかわからないまま、只々ぽーちゃんのパフォーマンスを眺める。力強い眼差しで歌い踊る彼女の姿が脳裏に焼き付いている。これは覚めない夢なのだろうか。いつの間にか4人はステージに戻っていたけれど、その後の「ナガレボシ」の記憶がない。「イエローライト」でようやく夢から覚めたような感じだ。それにしても、こういった演出もまた彼女達のプライドであり覚悟のひとつのように今になって思う。演者と観客との間に相当の信頼関係がなければ、こういう演出は難しい。特に、今のこのご時世では。それが成立したとこも、ある種の奇跡と言いたくもなる。

相変わらず「ポップコーントーン」では歌い出しから泣いてしまうし、「イヤフォンライオット」では新生エビ中の進化に泣いてしまうし、本編ラストの「COLOR 」のアンセム感に泣いてしまう。白い紙吹雪の大団円感も素晴らしく、これから〝色々歩く〟エビ中を思い感情が高まる。

「これはアンコール、あるね」という周りの声を聞きながらスクリーンの〝エンドクレジット〟を眺める。メンバーそれぞれのツアー思い出の写真が映し出されていく。それだけで、もうグッと来てしまうくらい感情のコックは緩々だ。

アルコールで初披露された「青春ゾンビィィズ」も「Anytime,Anywhere 」も勿論良かったけれど、やはりこの夜が「手をつなごう」で締め括られた事にわたしは心動かされてしまった。意を決するようにして歌い出す柏木さんを見た瞬間に心に巣食っていたモヤモヤ、澱のようなものがスーッと浄化されたような気がする。

「手をつなごう」が元々ファイナルのセトリに入っていたのか、或いは当日急遽追加されたのか、そんな事は分からないけれど、しかしこの曲が持つ(ややナイーヴ過ぎるくらいの)ストレートなメッセージか、今は響いてくる。このライブに来て良かった、とそう思った。

終演後、外へ出ると、当たり前のように土曜の夜がそこにあった。ある種の若さが生み出す欲望がそこかしこに感じられた。それは懐かしくもあったが、今の自分とは縁のない世界にも見えた。わたしは、最後のMCで泣きそうなるのをグッと堪えていた柏木さんとそれに呼応するかのように周りに集まってきてポーズを取るメンバーの姿の事を想い出しながら駅へと歩いていった。