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ドラゴ君は寂しくないの?【映画】『ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ』雑感。

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』予告編 - YouTube

正直、オリジナル公開時にはJBのMVと爆発するグローブの印象が強くそれほど思い入れはなかった。自分の中でロッキー3でシリーズが綺麗に完結した、という気持ちがあった為、どうしても蛇足のように感じていたこともあるし、思春期真っ只中で王道エンターテイメント作品に対して斜に構えていたのもある。

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ』

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いやー熱かった!!!変更点の細かい箇所を指摘できるほどオリジナル版を観込んでいる訳ではないけれど、明らかに印象が違う。それはこちら側の変化も影響しているとは思うけど、編集やパズルのピースを入れ替えるだけで、このように作品に奥行きが生まれることへの驚きもある。

クリード』シリーズを経た今、こうやってこの作品に向き合ってみると、予想以上にドラゴに感情移入していることを発見する。アポロ戦での派手な〝アメリカ風演出〟に戸惑う姿を観ていると(アポロ…やり過ぎやで…)という思いが当時以上に強調されるし、ロシアで試合してイキイキしていたのに結局気がつけはロッキーへの大声援で、ここでもアウェーになってしまうという、この哀しさ。それは、敵役としてのクリシェではあるのだけれど、それを超えて〝人間イヴァン・ドラゴ〟としての尊厳やアイデンティティが脅かされている様、その悲哀が観ているこちらにストレートに響いてくる。

そう。これはドラゴの〝個としての尊厳〟を取り戻していこうとする物語でもある。ソ連の国家戦略、そのプロパガンダの装置としてロボットのように作り上げられているドラゴが、その呪縛から逃れようと足掻く姿が描かれる。アポロ戦の後の「ドラゴォ…ドラゴォ…」というからの叫びは、そのメッセージに思える。

ロッキー戦の前、記者会見の場は東西冷戦的に荒れているが、去り際にドラゴはロッキーに視線を向ける。ロッキーは気づいていないが、ほんの一瞬、ドラゴはロッキーにコミュニケーションを取ろうとしているように見える。しかし、結局彼は無言で立ち去ることしかできない。さりげないけれどこういう機微の細かいところへ目配せが出来るスタローン、流石だなと思う。

ドラゴの科学的トレーニングとロッキーの泥臭い謎トレーニンとの比較もテンポ良くて、ここでもむしろ〝人間ドラゴ〟の悲哀の方に感情のベクトルが向いてしまう。

試合終盤、ロシアにも関わらず会場はロッキーへの声援で埋め尽くされる。ここで、もうわたしは泣いてしまう。ドラゴ、嗚呼…ドラゴよ。「自分自身のために闘う」という宣言は、もちろん言葉通りその通りではあるけれど、おそらくはそう鼓舞しなければ彼の精神は保たなかったのではないか、とも思う。

とかなんとか言ってるけど、結局は試合の面白さ。二人の殴り合いのアツさ。それが一番だったりもする。ロッキーがドラゴに最初の一撃を食らわすその刹那には、ドドーンと音楽がなって思わず鳥肌が立つほどグッときたし、ロッキーの最後のアジテーションは、ややトゥーマッチにも感じてしまうけれど、激変していく世界情勢の中では妙な説得力もある。

そして観終わった後に思うのは「ロッキー3でも観るか」だったりもする。