スターウォーズシリーズがエピソード4から始まるかのように、講談もまた長い物語の一部のどこをとっても楽しめる仕組みになっていて、それが新鮮でもありまたオーソドックスなスタイルであるという不思議さ。
という事で観てきました。
前回の松之丞さんこ独演会では天一坊の生い立ちから越前登場までを聴いていて。そのピカレスクロマンの香りが沸き立つ天一坊の色気にクラクラした事を覚えている。
そして越前登場!というところでアメドラのクリフハンガー的に「この続きは…」となった丁度その続きが観られるというのは幸運という他ない。
夜の部は4人の講談師によるリレー方式。それぞれのキャラクター造形や物語世界の違いが感じられて不思議な感覚になる。天一坊の出番は少ないが、越前と山内伊賀亮との対峙の場面をはじめスリリングな場面が多く楽しい。
松之丞さんが冒頭にやったあらすじ説明はまさにスターウォーズの開幕のようでもあり。
神田松之丞「閉門破り」
脱出を試みる越前とその仲間たちを描いた一席。門番とのやり取りはコンゲーム映画のようなスリリングさがあり、夜の闇とそこで繰り広げられる男たちの姿が浮かぶようだ。
侍や中間とのキャラクターの演じ分けは当たり前のように素晴らしい。ふとしたときに沸き立つ色気が良いですね。
神田阿久鯉「水戸殿登城」
水戸殿の天然ボケぶりを始め、ユーモラスな場面の多い一席。「下にぃー下にぃー」という声が段々と近づいてくる描写にハッとさせられる。シンプルだが極めて効果的に距離感を表現する技術に講談の深みを見た気がする。
神田愛山「天一坊呼び出し」
再調べ通達の場面はやがて訪れる越前vs山内の前哨戦のように思えて。
再調べで呼び出した天一坊一派を挑発する場面のスリル。裏口を通らせる際の門番の乱暴さや十手を頭の上でゆらーりゆらーりとかざす様のイヤラシサ。悪と正義の境界線が曖昧になる刹那。
越前と山内伊賀亮とのラスボス対決。切れ者同士の静かなやり取り。相手の隙をつく言葉の応酬、ロジカルなやり取りはそのまま命のやり取りにも通ずる。
山内は越前をやり込めつつも、どこか諦観のようなオーラを帯びているのうにも感じる。常に陰謀露見しているというスタンスを保つべし、というヴォランとしての矜持や心得が浮かび上がる。ヒリヒリとした緊張感というよりも酸いも甘いも知り尽くした大人の男たちの重厚感のある空間。
ラストの立ち去っていく天一坊の一群に〝続く…〟の文字が見えたような見えなかったような。
という事で続きは来年ですか??待ちきれないっ!