
勿れ。と言うわけではないけれど、少しハードルを上げ過ぎていたかもしれない。演者も素晴らしいし、2時間半ダレることなく楽しめたけれど、同時に物足りなさを感じてしまったのも正直なところ。わたしは日本史に明るい方ではないけれど、戦国モノの大河ドラマは好きで、今も『豊臣兄弟』を観ていたりするので、今回の有岡城周りの背景はスッと入ってくる。一方で、荒木村重はトータス松本のイメージが残っていて、俗物で自己中心的な人物という印象が強い。そういう意味で本木さんというキャスティングは少し意外性がないこともないが、今作での荒木村重の立ち位置(翻弄されながらも、領主としてのdignityを保たなければならない)にはよくあっていたと思う。その威厳のある領主の貫禄は、荒木村重という人物の俗物性から目を逸らすミスリードのようでもあり、黒田官兵衛に(まるでレクターに見透かされたクラリスのように)内面を吐露してしまう弱さが徐々に明らかにされるスリリングさはある。
確かに最初に述べたように「戦国時代を舞台としたミステリ」というエンタメ要素を求め過ぎると肩透かしをくらう。わたしも、そういった者を期待していたので、その点については少し物足りない。しかし、2時間半観終わってみると不思議な感慨があった。千代保の取り憑かれたような(という言葉が正しいかわからないけれど)信心深さとか、忠義の行き場に戸惑いながらも武士や家臣として生きていくしかない十右衛門や助三郎、あるいは増賀の面々などを見つめていると、「そこで生き続けていく(或いは死んでいく)」ことへの矜持を感じる。もちろん、現代の価値観で観れば、それを閉塞感として捉えてしまうが、同時に村重の「行くな、守れ」というメッセージ性には現代に通ずる共振しやすくなるような仕掛けがあるような気もする。領主であることを捨てて旅立っていく村重は、当時のパラダイムから見れば許されざるものであるし、現代の目からみても「結局、生き延びて茶人となった…」って何やねん!とも言いたくはある。けれど、身軽になってあらゆる呪縛から解き放たれて趣味人として生きていくという選択は、それはそれで羨ましいものでもあった。





