妄想徒然ダイアリー

映画と音楽とアレやコレやを

I wish you were here【映画】『シン・仮面ライダー』雑感。

『シン・仮面ライダー』予告 - YouTube

f:id:mousoudance:20230318160638j:image
f:id:mousoudance:20230318160635j:image

ヒーローはたいていの場合孤独だ。突然手にしてしまった大いなる力に戸惑いながら、終わりの見えない敵と闘う。多くのヒーローの物語の中で、そんな姿は描かれてきた。仮面ライダーもそのひとつだ。

確かにテレビシリーズの本郷猛には仲間がいた。おやっさんやルリ子、あるいは一文字隼人とのタッグなど確かにひとりで闘い続けている訳ではない。しかし、ショッカーによって改造人間にされてしまったという苦悩は、本郷猛(と一文字隼人)にしか分かり得ない。ショッカーに造られた改造人間でありながら、〝世界平和のために〟ヒーローとして闘う事の矛盾と欺瞞。

テレビシリーズの序盤を見返してみると、そこにはダークさと怪奇物語としての禍々しさがあって、今作の導入部分はそれを上手く再現していた。

そして、本郷猛を池松壮亮が演じる事で、ナイーブな面が増幅された。コントロール仕切れない力は人を殺めてしまう程で、池松本郷はその戸惑いを隠さない。ショッカーと闘う覚悟を持つまでに、いやその覚悟を持ってしても彼には優しい気持ち(或いはそれを弱さとも言うのかもしれない)が拭いきれない。逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…。

そういったキャラクター造形は庵野節の影響が強く見て取れるし、だからといって取っ付きにくくもなっていない。むしろ、そういった苦悩や葛藤の深度は比較的浅く設定してあるようにも思う。

同じく特殊効果についても意地悪な言い方をすると少し粗っぽい感じなのだけれど、それも昭和特撮へのオマージュだと思うことにしている…けれどどうなんだろう。ややぎこちないリズムの編集も含めて、そういった粗っぽさは確かにあるのだけれど、それほど違和感を抱かなかったし、むしろ「仮面ライダーを観ている」という気分にさせてくれるのに充分だった。

キャスト陣は池松壮亮は勿論の事、緑川ルリ子の浜辺美波のクールな立ち振る舞いもとても良かったし、あの人やこの人のサプライズ的登場も楽しい。中でも一文字隼人の柄本佑そしてハチオーグの西野七瀬がとても印象的だった。

そんな事をぼんやりと考えながらスクリーンを眺めていると映画は終盤に差し掛かっていた。わたしはこの締めくくり方はとても良かったと思う。仮面ライダーらしい闘い方とシン仮面ライダーとしての決着のつけ方のバランスも取れていて、赦しや救済も描かれている。大いなる力を持った者の責任と覚悟も〝仮面ライダー〟にしっかりと刻まれていた。特に一文字隼人のあのセリフにはかなりグッと来てしまって、「嗚呼…あなたもそういった孤独を抱えていたのだね」という気持ちが湧き上がってきて、それは今作でも最もエモーショナルな瞬間だったと言っても良いくらいだ。

という訳で、エンドクレジット含めてとても満足した気持ちでが劇場を後にしたけれど、ただ一つ不満があるとすればグッズのシン・仮面ライダーアルバムが手に入らなかった事くらいです。