妄想徒然ダイアリー

映画と音楽とアレやコレやを

俺がやらなきゃ誰がやる。【映画】『ザ•バットマン』雑感。

『THE BATMAN〜ザ•バットマン

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』US予告 2022年春公開 - YouTube

f:id:mousoudance:20220312151148j:image

終始暗い画面が続き、ダークでシリアスな面持ちのブルース•ウェインを愛でる3時間であった気がする。裏を返せば果たしてロバート•パティンソンでなければどうだったんだろうか、という思いもない訳ではないけれど、実は真っ当にヒーローとして振る舞っている仕上がりも悪くないし、何しろ(抑えめではあるものの)ガジェットを楽しむ要素もあって、例えばバットモービル登場の場面は個人的に白飯5杯イケるくらいであった。予告編で流れるニルヴァーナNirvana - Something In The Way (Live On MTV Unplugged Unedited, 1993) - YouTubeの曲はしっかり本編でも使われていて(というよりそれをモチーフにしたスコアがメインテーマ的にリフレインされている)、とても効果的に響いてくる。という訳でわたしはかなり満足している。

一方でネガティブな意見があるのも予想出来る。謎解きサスペンスの部分が緩いと言えば緩いし、満を辞して登場したリドラーの小物っぷりなど気になるところは確かにある。雰囲気だけで3時間引っ張ったと言われれば強く否定は出来ないし、ブルース•ウェインが終盤に取る行動のあまりの真っ当さに鼻白む人もいるかもしれない。

わたしには、そういった要素は瑕疵というほど致命的なものには感じられなかった。むしろ真っ当なヒーローとして行動を取るバットマン=ブルース•ウェインの姿は(今このご時世だからかもしれないが)スーッとわたしの身体に入り込んでくる。

マスクに泥をつけながら献身的に働く姿は、バットマンとして(バットマン原理主義というのがあるのだしたら)正しいのかどうかはよくわからない。しかし、ブルース=バットマンの行いは、復讐といったダークさを根源としているように見えて、実際にはその行動規範はノブレス•オブリージュそのものだったりする。夜の街でマスクをつけて悪漢を倒して(決して殺さずに)退治する事、それこそブルースにとってのウェイン家のレガシーを継承しているという証に他ならない。そしてそれを明確に意識し自覚していく終盤の展開はアツい。復讐ではなく、希望だ。シンプルだが力強いメッセージとして響いてくる。

と同時にバットマンにはヴィランすれすれの異質感、例えるならジェームズ•ガンの名作『スーパー!』のクリムゾンボルトに通じる怖さもまたあって、ヴィラン側の「いやアンタのやってる事オレと変わんないって!」という主張が似合うヒーローでもある。

今作ではそういうヤバさもありつつも、ロバート•パティンソンの唯一無二の佇まいが放つ怪しさと妖しさこそが魅力となっていて、その眼差しを観るだけで価値のあるものだとわたしは思うのです。