凄くナイーヴな言い方になってしまうけど、やはり世の中がこんな状況になると「愛はどこへ行ってしまったんだ」という話にもなってしまう。もちろん、社会の成り立ちは単純なものではないし、色んな要素が絡み合っているのは承知しているけれど。
CHIAKI MAYUMURA Tour”ima”
ライブハウスで眉村さんを観るのもいつぶりだろうか、思わぬ良番で最前ではなかったものの前方に位置取ることが出来た。
いやー楽しかったですね!ハッピーとはこのことか、と。
LIVE中は脳内にアドレナリンがドバドバ分泌されてマスクをしていたから良かったものの、マスクがなければかなりとんでもない笑顔になっていたのではないだろうか。そして会場に来ている人間をひとりひとり見つめる(比喩ではなく本当に)眉村さんの姿を眺めていると、表現し難い感情が身体の中から湧き起こってくるのです。そうやって楽しい記憶だけが残り、相変わらずセトリは記憶からこぼれ落ちていくけれど、思いつくままに。
新しいアルバムの名前を冠したツアーなので当然の事ながらそれらの曲が中心となる。それらにライブの定番曲達がバランス良く配置されていたという印象。「モヒート大魔王」に始まり大大円の「旧石器PIZZA 」まで見事にパッケージされたセトリではなかったでしょうか。
見どころを挙げればキリがない。
序盤の「この朝を生きている」でいきなりトラックが止まり、しばらくアカペラで歌い続けた場面。「こういうのがライブの醍醐味だよね」と思いつつ、更にもう一度初めからやり直してまるでタイムリープしたかのようにフリの台詞までさっきと同じように再現する様子を観て「眉村さんのライブに来ている」という実感がグッと強くなった。
久しぶりにライブで観る「ブラボー」は良いものだなあ、と思いつつ、「なまらディスコ」のかっこよさにやられる。
この曲自体がとても素晴らしい完成度だったんだけど、こっからシームレスに「東京留守番電話ップ」に繋がったところ、のけぞるくらいにメチャクチャクールでしたね!
あの、今回のアルバム『ima』を聴いて思ったのは洗練と失われない仄かな狂気、って事だったんですね。洗練にはネガティブな意味を帯びる事があって、それをポップ化と言い換えても良いけれど、要はインディーズからメジャー路線になる際に、大衆化する事で独特のオリジナル性がなくなってしまうんじゃないか、という危惧について語られる事が良くあります。眉村さんについても同じような言説を見た事がありますが、今回のアルバムを通して聴いてみると洗練とオリジナリティ溢れる狂気のようなものが絶妙なバランスで成り立っていると思ったのです。
今夜のLIVEもまさにそうで、新しいアルバムの洗練と過去の定番曲の爆発するような個性がシームレスに繋がっていく様は見事だった。
「寝かしつける」のアルフォートの袋を使ってトラックを彩るやり方も最高だけれども、後半のギターソロ!あのアレンジ、カッコよすぎではないですか?
あと個人的にライブ中の眉村さんで好きなのが準備しているときにふと見せる真面目な表情なんだけど、今夜も「インドのリンゴ屋さん」(楽しかったなぁ!!!)から「天才論」(これまた素晴らしい!)に移るほんの一瞬にそんな表情を見せてもらった。※いつものように撮影許可はあったけれど、結局は自分の網膜に焼き付けてしまう事になる。やがてそれも薄れゆくけれど、それがLIVEって事じゃないの?なんて。
本編ラストは即興ソングから始まったので「ピッコロ虫」が来ると構えていたけれど「Lovely days」だった。冒頭から歌詞を忘れる眉村さんだったけれど、個人的には「あれ?この歌詞の続きなんだっけ?〇〇〇〇?そんな歌詞わたしが書く訳ないか」といってたところに不思議な感心をしたりして。
それにしても「旧石器PIZZA 」の大団円感、アンセム感は何なんでしょうか。イントロの〝ドンルク風味〟も相まってとてつもない高揚感がある。最初、アコギを抱えていた眉村さんが曲が始まった途端にバッとギターを降ろして何かが憑依したかのように踊りまくる姿を観ているだけで、身体の中の何かが浄化されていく気すらする。
圧倒的なライブ空間を堪能した2時間だった。声も出せないわたし達だけど、「大丈夫。心で叫んでも伝わってるから」という眉村さんの言葉通り、横浜にはこの2時間の間に愛が、ビゲスト•ラブが溢れていたはすだ。
わたしはこのツアー、この初日にしか参加できないけれども、改めて眉村さんのライブの素晴らしさを再認識した。そして、帰りに思わず買ったアルフォートを齧りながら、「甘さだけでない微かに感じる塩味が良いんだよなー」と思う夜でもあった。だから何だ、という話だけど。