妄想徒然ダイアリー

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打ち上げ花火は誰も見ていない。10/24(日)眉村ちあき日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ「ナントカサマーフェスティバル」雑感。

ついこの前まで半袖で出勤していたはずなのに、今ではジャケットを羽織るどころかタイツまで履くようになっている。すっかり季節も変わっていくが、冬の夕方の空気も嫌いじゃない。

しかし、そこでサマーフェスティバルをするのが眉村さんだ。

眉村ちあき日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ「ナントカサマーフェスティバル」

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サイリウムのサインは買ったそばからその原型を変えていき、上の写真ではまだ面影があるけれど気づけばただのインクのシミに変化していった。この世に永遠の物などはない、というメッセージのようでもあり、或いは、サインとは形ではなく誰の手によって刻まれたかどうかなのだ、というサインの概念そのものを問いかけるようでもある。

開演時間を迎える頃にはすっかりと夜。〝individual〟で始まったステージは、いつもの眉村さんらしい明るさと親しみやすさは勿論のこととして、同時にマスを相手にパフォーマンスをする逞しさのようなものも感じるパッケージだった。

「この時間夕焼けになってると思ったんだよね」と眉村さんが想定してセトリに組んだ「愛でほっぺ丼」といった新曲(のちに述べる他の新曲含めて)とお馴染みの曲たちのバランスもよく、それぞれがそれぞれの個性によって成立していたような印象を受けました。もちろん、荻窪選手権〟f:id:mousoudance:20211024224229j:image

〝ピッコロ虫〟という定番ソングのライブでの盛り上がりは言うまでもない話(〝本気のラブソング〟のドシャンドシャンとした音が強調されたアレンジ、カッコ良かったですね。)だけど、だからといって「そういう曲と比べると新しい曲はなぁ…」というような事はない。全ては眉村さんの下で平等に輝くパワーも持っている。

〝なまらディスコ〟と名付けられた曲は、初見で詩の内容もハッキリと判らないままではあったけれど、まさに眉村さんの無意識な凄みのようなものがあった。MCで「もしかしたらこの詩は(大人の事情で)変わってしまうかもしれない」といったフレーズが、まさにわたしの心を捉えたのです。[背中の隙間にワクチンブッ刺して]という一節は、言葉のパワーだけでなく、どこか時代の空気を切り取ったようになっていて、聴いた瞬間ちょっとのけぞるくらいの凄みがあった。

優れた表現者というのは時に意識せず時代性を掬い上げるもので(たしかにワクチンという単語自体は今、使われがちだとは思うけれど)、この曲にもそんな底知れぬ魅力があるように思うのだ。

とちょっと独りよがりな意見を述べてしまったけど、いやホント良い曲ですよ。

〝旧石器ピザ〟もまた、これからライブの定番になりそうなポテンシャルを感じる。何というかオアシスの新曲とでも言いたくなるアンセム。シングアロングしたくなるのもそうだし、適度なコール&レスポンスも良い。初見の曲はどうしても対応するのに時間がかかるものだけれど、この曲はスッと身体に馴染んでくる。サイリウムを使った演出(客席でみんながサイリウムで花火を作る)が空振りに終わったけれど、むしろそれくらいパフォーマンスに集中していたのかもしれない。

〝悪役〟で締めくくられた本編は、それだけでも充分なステージだった。程なくして現れた眉村さんは恩師荒川先生と共に〝代々木公園〟を。動画撮影も許可されて、わたしもiPhoneを構えてはいたけれど見返してみるとほとんどその姿は捉えられてなく、というのも気がつけばステージに集中して手元が疎かになったからではあるが、それは正しい結果だと思っている。

アンコールも〝手を取り合うからね〟でエンディングを迎えたけど、それも眉村さんの自信の現れに思えて仕方がない。〝大丈夫〟や〝ピッコロ虫〟のようにフックのある曲ではないけれど、客席の一体感を作り上げるこの曲は、静かな余韻とカタルシスを与えてくれる力がある。しっとりと終わる優しさとでもいいましょうか。この曲で終わるエンディングもまたいいものだ。

今回は久しぶり(2年ぶり?)に現場にカメラを持ち込んだ。古いαとそれ程明るくないレンズではあったけれど、それなりには頑張ってくれたと思う。

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眉村さんと言えば踊りも魅力のひとつで、そのほとんどは捉えきれていないけれどきちんと網膜には焼き付けている。自由でありながら、コンテンポラリーダンスとしての基礎も感じる踊り。良いですよね。

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ダブルアンコールという形で再び「旧石器ピザ」を。「今度は花火やるよ」という眉村さんに従ってサイリウムで花火を作ったけれど、その花火は誰にも見られてない。そう、サインと同じように消えていく儚さにこそ尊さがあるのです。ちょっと嘘だけど。