妄想徒然ダイアリー

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世界、温めますか。『第10回パンダ音楽祭 500人ぼっち〜ぼっちだけどぼっちじゃない』雑感。

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野球観戦やライブも遠征も基本ぼっち派のわたしにとって今回のパンダ音楽祭に死角はない。とはいうものの、お酒が飲めなかったり声を出す事も禁じられているのはやはり寂しい。2年前に来た時は、上野の大衆居酒屋に適当に入って昼酒キメてから会場に向かったりして、嗚呼そんな世界は戻ってこないのか…。

第10回 パンダ音楽祭

しかし!そんな不安は全く不要で、とでも楽しく心に響く4時間でしたよ。

トップバッターの関取花さんは、とても伸びやかな歌声が身体に響いてくるような感覚があって、これまでとは違う開催スタイルにあった多少の戸惑いを解消してくれる。一見ほんわかした曲調にもチクリとした毒もあって面白かったですね。

そして眉村ちあきさんですよ。ショートカットになった眉村さんはジンベエスタイルにパンダキャップを被っていて、いやまあ控えめにいって大変魅力的でありましたよ。

そして相変わらず会場のムードを一瞬にして掴むそのパワーは圧倒的で、「ピッコロ虫」のトラックがドーン!って鳴るところは今日もカッコいいし、笑顔で歌い踊ってる姿を観ているだけで楽しくて泣けてきてしまう。特に「メソ・ポタ・ミア」での♪ビーナス、ビーナス…のくだりを無限ループさせてケチャをさせるのは、今までのライブでも何回か経験しているけれど、しかし何であんなに楽しいのでしょうか。眉村さんが楽しそうにしているというのもあるし、あとはアレですかね、一体感?知らんけど。

パンダいや、MIFAンダ?君を呼び込んでの「ニーゼロニーゼロ」も楽しかった。さっきから楽しかったしか言ってませんけど、楽しかったんだから仕方がない。

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終盤、汗を滲ませながらエレキを弾く眉村さんの姿は、ほとばしる青春の輝きのようなものを感じて、とても眩しかったです。カメラ持っていかなかったのでiPhone以外での写真を撮れてないけれど、わたしの網膜には焼き付いていて、グルーヴ感たっぷりに身体をくねらせ、弾けて、踊るその姿は確実にわたしのエモーショナルな部分を刺激してきました。やっぱり、LIVEで観る眉村さんは格別だ。

続く奇妙礼太郎さん。少し空模様も怪しくなってきた夕方の時間。風が時折、会場内を通り抜けてセットの垂れ幕が揺れたり、カラスが鳴いていたり、名も知らない鳥のさえずりが聴こえる中で奇妙礼太郎さんの歌声が響く空間は、とても良いものだった。世界はもしかしたら今冷めているのかもしれない。でもそんな世界も何かで救われる(事もあるかも知れない)んじゃないか。と、そんな事を考えていたりもした。

そこに登場したのが忘れらんねえよ・柴田隆浩さんだ。冒頭の「この高鳴りをなんと呼ぶ」からステージの温度が5℃くらい上がった気がする。まるで上を向いたシューゲイザーというか、ポジティブなルサンチマンというかそういった矛盾が持ちながらも説得力のある何かが爆発するような曲がストレートに胸を打つ。

「バンドワゴン」で叫ばれる〝間違ってるだろうか〟というメッセージ。彼は「誰も間違っちゃいない」というアンサーをわたし達に届ける。と、こんな事を書いてしまうくらいわたしの中にグイグイと入り込んでくる、熱いステージだった。音楽で曲で世界が変えられるんじゃないか、とそんなナイーブな事を考えてしまうくらいに。

いよいよ最後は曽我部恵一さん。パンダ音楽祭の締めくくりに相応しいパフォーマンス。その優しい歌声は世界を包み込むようで、と同時に激しさも併せ持っていて、ありふれた言い方になってしまうけど圧巻の時間だった。

明らかに以前とは違う形となった世の中は、もしかしたら冷めてしまったコンビニのコーヒーを温め直すような事は出来るかもしれないけれど、でもそれはやはり元通りに戻る事とは違う。そんな諦観はやはりわたし達の中にあって、でもそれでも生きていく、というか。それもまた人生、みたいなね。セットリストのどの曲もそんな優しさと同時に激しく心を掻きむしるような何か。そして少しの諦観を感じながらも生きていく、そんなものがあったような気がします。

そっちはどうだい うまくやってるかい こっちはこうさ どうにもならんよ 今んとこはまあ そんな感じなんだ

サニーデイ・サービス「青春狂走曲」より

まさに、これが今のわたしの気分でシラフの身体にスーっと染みいるようだった。焼酎のロックでもヤリながら聴いていたらトンでいたかもしれない。昼間の明るさが段々と夜に変わっていく宵の口の空気と曽我部さんの空気がピタっとハマるようなステージは、まさにパンダ音楽祭を締めくくるのに相応しかったように思います。

今回で一区切りというパンダ音楽祭。わたしは現地に参加したのは2回目だったけれど、とてもいい空間だったし、楽しい音楽祭でした。またいずれ、今度はお酒を呑みながら再会したいですね。