とある映画にて登場人物達が政治的トピックを語る中で、唐突に「そんな事よりさ、ワイスピの新作楽しみだよね」的セリフが飛び出るシーンがあって大爆笑した訳。
という事で観てきました。
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』最新予告映像 - YouTube
正直なところワイスピシリーズにはぼんやりとした距離感しか取ってなくて。WOWOWかなんかで放送しているのをたまたま見かけるとかその程度で、劇場で観た事はない。
もちろんドウェイン・ジョンソンやジェイソン・ステイサムが関わっている作品に間違いはないというのも判ってはいるが、「公開したから観に行かなきゃ!!」となるシリーズではなかった。
では何故観に行ったのかというと理由は二つある。
一つ目は池袋のグランドシネマサンシャインのBestiaという上映システムを体験したかった事。前回この劇場版ではIMAXレーザーGTで『天気の子』を観たがそれほど他の上映システムと比較して映像の優位性を感じなかった。川崎のIMAXレーザーを初めて観た時のような衝撃はなかった事が何となく引っかかっていて、ではこのBestiaというのはどんなものかな、というのを気軽に試してみたかったというのがその理由の一つ。
で結論から言うと映像はパキッとしたクリアさが感じられて個人的には好印象。特に肌の質感、ロック様の顔がアップになったときなんかは毛穴まで見えてる感じ。音の方も重点音が効いていて、立体感は驚くほどではないけどなかなか迫力はあったんじゃないかな。あくまで個人的意見ですけど。
そしてもう一つはヴァネッサ・カービーの存在。彼女を観るためだけに劇場に行ったと言っても良い。予告編で彼女の姿を目にした時に「あ。これは観たいかも」と思った。
『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』でも小さな役ながら強い印象を残した彼女だが、今作においても魅力を発揮している。
この世でないどこかを眺めているかのような眼差し。ニヒルな表情をするかと思えば、眩いばかりの笑顔を魅せる。とにかく観ていて飽きない。
どこまで彼女が実際に動いているかは判らないが、アクションシーンもカッコいい。銃の構え方も様になってるし、終盤のコンテナの上をピョンピョンと飛び跳ねながら走っていくシーンだけでも観る価値があると思わせる。
いや実際にそのシーンはスタントマンかもしれない。というかおそらくそうだろう。しかしそうだとしてもハッティという役柄をヴァネッサ・カービーが演じているという前提があって、ハッティがそこにいて走っているというリアリティがそこにある。と思うんですよ。
で。そのハッティを中心にとしてホブス(ドウェイン・ジョンソン)とショウ(ジェイソン・ステイサム)が男臭く活躍していくストーリーは直線的で明快だ。シリーズにぼんやりとしか接していない自分でもわかりやすい設定で戸惑う場面は全くと言っていいほどない。確かに細かい背景やシリーズ特有の伏線などはあるのかもしれない。でもそれは初見の観客のスムーズな鑑賞を妨げるものではない。
半ば強引にカーアクションへ持っていくあたりもむしろ痛快で「ニトロ発動!!」の場面のカタルシスも良いバランス。
監督はデビッド・リーチ。『デッドプール2』はもちろん『ジョン・ウィック』も『アトミック・ブランド』も大好物なわたしにとって楽しさ抜群。あの人も出てくるしね。
今回、まるでアメコミのヴィランのような立ち位置にいるブリクストンを演じるイドリス・エルバのオーラも素晴らしく、時折見せる哀しみを帯びた瞳が良い。そして英国キャスティングという事で言えば、エディ・マーサンやヘレン・ミレンの存在も作品に品格を与えてくれている。
冒頭映画開始の前にスクリーンに映し出される日本語タイトルの際の静けさ。それに続く東宝東和のロゴは、なんというか甘酸っぱい中学生マインドを思い起こしてくれるようで、そこも含めて楽しい2時間余りでした。