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ミイラは人間ですよ。【映画】『ザ•ロストシティ』雑感。

映画『ザ・ロストシティ』予告編 - YouTube

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梅雨が明けたかのような暑さだったこともあり、気軽に鑑賞出来そうなこの作品を。

ぶっちゃけテンポが良くないところもあったり、驚くほどの展開があるわけでもなく、意地悪な言い方をすると『ロマンシング•ストーン』の下位互換のように感じてしまう人がいたとして、それを強く否定する事はできない。

ただ、サンドラ•ブロックとチャニング•テイタムの関係性は従来の主人公とヒロインの図式を反転させていて、そういう意味ではラブコメをアップデートしていこうという意志を感じるし、その試みは面白いと思った。ロレッタの描いた小説世界と現実世界が入れ子構造になっている構成も、派手さはないけれど手堅くて悪くなかった。

と、何となく歯切れが悪い言い方になっているけれど、なんだかんだと2時間楽しんではいたのです。大きな驚きはないけれど、安心出来る展開はポップコーンムービーとして成立している。ファイナル•カウントダウンの使い方もそのベタ加減が程よくて何も考えずに笑ってしまう。ブラッド•ピットが記号的イケメンを飄々と演じている様も楽しいし、ロレッタの広報担当ベスの存在感も良いアクセントになっていた。個人的にはベスがある場面でスーツケースを放り出す場面は思わず声出して笑った。

そういったコメディとしての楽しさがある一方で、終盤結構グッとしまうところもあった。この物語はロレッタとアランのワンスアゲイン、もう一度人生をやり直していく話でもあって、そこが妙にわたしには響いてきた。その展開や言葉のやり取りはクリシェといえばクリシェで「多分こうなるんだろうな」という予想通りに物事は運んでいく訳だけれど、そんな中で、ロレッタやアランがそうであったかも知れない人生を自分の手で掴んでいく様に心の涙腺が緩んだ事をここに告白します。小説家として下り坂であるロレッタやスター目指して地方から出てきたけれど、今ひとつスターになりきれていないアランが、自己を見つめ直しながら変化していこうと歩みを進めていくのが、良いんですよね。(そう考えるとベスだって人生の一発逆転に一か八か賭けているとも言える)そういった片足を負け組モードに引っ張られている者たちの新たな未来へのエールと考えると、悪くない。

というわけで、個人的にはジャック•トレーナーの活躍譚を観てみたくなったけれど、まあそんなもの作られる訳はないですよね。