妄想徒然ダイアリー

映画と音楽とアレやコレやを

心肺蘇生はマカレナのリズムで。【映画】『TITANE/チタン』雑感。

『TITANE/チタン』

『TITANE/チタン』本予告 4.1公開 - YouTube

f:id:mousoudance:20220404080908j:image

なるほど〝怪作〟というのが相応しいのだろう。ただ少しハードルを上げすぎていたのもあってやや拍子抜け感を抱いた事は否定しない。

テーマについて明確に理解している訳ではない。キテレツな見た目に騙されそうになるけれど、喪失と再生とか贖罪とか家族関係の再構築とかそういった割と普遍的なものが軸となっているよう気がする。そこに狂気や偏執的な愛がコーティングされることで独特のルックが作られているのだろう。

アレクシアというキャラクターは異端なオーラを放っていて、冒頭の少女時代のアンファン・テリブルがそのまま成長したかのようなルックには不思議な魅力があった。ほぼ、予備知識ない状態で臨んだが、読めない展開にはスリルもあるし、多くを説明しない事で生まれる不安が上手く作用していた。確かにアレクシアが何故あのような行動に出ているのか?についての動機づけが不明瞭ではあるけれど、その唐突さについてはそれほど気にならなかった。というよりそれが不気味さを増幅していた気がする。

そんなアレクシアが出会うヴァンサンもまた、登場シーンから只者ではないオーラを放つ。行方不明の息子を探し続ける父親、というクリシェは一瞬で崩されて、早々に「あ。ヤバいなこの人」というのが伝わってくる。物語が進むにつれて、この物語はヴァンサンの救いと贖罪の為にあるのではないか、と思えてくる。消防隊長である彼は隊員達に向かって「わたしは神だ」という場面があり、であるならばアレクシアは神に捧げられたサクリファイスという事になるのかもしれない。そうするとラストシーンが彼の一言で終わった事にも意味があるように見える。

と、それらしいもっともな事を言ってみたけれど、センセーショナルな惹句ほどの衝撃はわたしには訪れなかった。例えば、ヴァンサンの腕の中で蠢くアレは、リアルなのか妄想なのか、そんな事も考えたりはするけれど、身体中の体液が沸騰するようなゾクゾク感まではやってこなかった。それは、わたしの感度が鈍っているのかもしれないし、月曜の、朝イチに鑑賞した事が理由かもしれない。多分、わたしの感性が衰えているという事なのだろう。

そして、わたしの衰えた感性はこう語りかける。最後にアレクシアからトランスフォーマーみたいな赤ん坊が産まれてきていたら、多分わたしはかなり興奮したハズだ、と。