妄想徒然ダイアリー

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不気味に響くマイケル・アイアンサイドの声。【映画】『悪魔と夜ふかし』雑感。

https://youtu.be/f9DsuTllLEM?si=RzerR3P2A4azJLg8:『悪魔と夜ふかし』予告編

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個人的にモキュメンタリーやファウンドフッテージ系は、それがフェイクだという前提があるから楽しめると思っているクチで、「どうです?リアルかフェイクか判らないでしょう?」とドヤ顔されるとシラけてしまう。

そういう意味で今作はとても良いバランスで成り立っていて、冒頭から惹き込まれる。当時のTVショーの胡散臭さとそれがジワジワと溶けていく怖さ。終盤の何とも厭〜な感じの何とも言えない後味。ジャック・デルロイの中にエンタメ界で生き残っていこうとする欲望のドロドロもありながら、何故か憎めないキャラクターとしても成立している描かれ方も良かった。 デヴィッド・ダストマルチャン、素晴らしかった。ギラギラとした貪欲さも困惑と怯えの感情を、僅かな表情の変化だけで表現していて印象的だった。

大槻教授的なキャラクターを配置する事で、中で起きている事についての認識が揺らいで行くあたりも巧いなぁ、と。ガスという常識的なキャラクター(すなわち、それは観客のわたし達でもある)によって、まさに催眠術にかかったかのように現実が歪んでいく。その後に一気にドライブしていくクライマックスも最高だった。クローネンバーグやキューブリックのような肌触りもあって、観客席のスカル野郎やカルト集団の不気味さも生々しい。

もう、一捻り展開が欲しいような気もするけれど、最後に取ってつけたような種明かし的なオチがつくよりも、この方が正解だったような気もする。

その後味は劇場を出て夜の街を歩いている時にもまだ残っていた。 A24やJホラーとも違う、アメリカの狂気とその不気味さが濃縮還元されたかのような鉛のような恐怖が身体の中に忍びこんでいる。