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ただ、そこにあるエンタメ。【映画】『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」本予告編【インディが人生をかけて探し求めた秘宝“運命のダイヤル”とは…】6月30日 全世界同時公開! - YouTube

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正直積極的に観るつもりもなくて、「今更」という気持ちもありつつも、ここまで来たら見届けるかという感じで劇場に向かった。

うん。色々とあるけれど観て良かった。そんな感じです。

余り情報も入てなくて、今回もスピルバーグ監督作のつもりでいた為ジェームズ・マンゴールドの名前を見たときは少なからず驚いたけれど、流石というか手堅い演出で2時間十分に楽しめた。シリーズをリスペクトした感じの序盤のアクションシーンや敵役フォラーとホテルの給仕とのヒリヒリとした会話などスリリングな場面もあった一方で、ややテンポが良くないところあって、そういう意味ではスピルバーグで観たかった(前作の『クリスタル・スカルの王国』ではスピルバーグですら核の描写はこうなってしまうのか。という驚きと軽い失望もあったけれど)という気持ちも少しある。

今回のインディは自ら望んで秘宝探し、冒険の旅に行くわけではない。いわば、巻き込まれ型の主人公として否応なく旅に出ていく訳だけれど、それはハリソン・フォードの困り顔とともに、これまで彼の作品で観てきた馴染み深いものでもある。今回、インディ・ジョーンズシリーズとしてもやや荒唐無稽な展開であったように思うけれど、それを比較的すんなりと受け入れる事が出来たのは、そういう事かもしれない。

ハリソン・フォードの「だって、しょうがないじゃないか」とでも言いたげな表情で演じている姿は、すなわち職人としての俳優或いはエンタメ作品のスターとしての彼なりの矜持であるとも言える。だからわたしも目の前にあるエンタメを「ただ、そこにあるエンタメ」として享受する。

それが成立する作品もなかなかなくて、しかもインディ・ジョーンズのような長寿シリーズともなると〝原理主義的なスタンス〟をもつファンも多くなる。「こんなの◯◯じゃない」という声も大きくなろうというものだ。今作は、そういったノイズを比較的のぞく事に成功しているように思う。

マッツ・ミケルセンも良い敵役ぶり(最近ありがちな敵役の方に見せ場や感情移入する余地を与えすぎない感じも良い)だったし、フィービー・ウォーラー=ブリッジの颯爽として知的なキャラクターも良かった。(そして思うのはシャイア・ラブーフの事だ。彼の存在があればまた違った作品になっただろうし、別な形でシリーズが続いていく未来もあっただろう)

「レイダース」や「魔宮の伝説」を観ていた当時のわたしに40年後にシリーズ続いてるよ、と言っても信じないだろう。まさに時空の裂け目を飛んできたかのような序盤の若いインディの姿を眺めていると、今だからこそ出来た作品である事をひしひしと感じるし、インディ・ジョーンズの物語の締めくくりとしてあるべくしてあった作品だったようにも思う。そして10年後、ハリソン・フォードの顔をした全盛期のインディ・ジョーンズの新作が作られても驚きはしないのかもしれない。

あ、タイトルバックのフォントにもう少し工夫が欲しかったのと邦題は「/」を使って欲しかった、という原理主義的な意見を最後に言ってみたりしたくなるのも、また趣のある事なのかもしれません。