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ポケットに入れた鍵は失くす。【映画】『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング PART ONE 』雑感。

映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』ファイナル予告 - YouTube

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シンプルな台詞がとても印象的な映画として個人的には『デッドゾーン』の「グッド・バイ」があるけれど、今作のある人物が言った「グッドラック」も中々良かった。

鍵を巡って大騒動。すばりストーリーとしてはそれ以上でもそれ以下でもない。終始、トム・クルーズが頑張り続ける3時間だった。

今回、争奪戦となっている鍵というものが、よくよく考えてみるとどれほどの脅威なのかというのも実は薄っすらとしているんだけれども、空虚なマクガフィンを巡るてんやわんやが飽きる事なく観られているという事実こそに意味がある。のかもしれない。

こう書くと映画か詰まらなかったように聞こえるかもしれないが、そんな事はなくて面白い。狂気すら感じるアクションとスタントは『フォールアウト』に引き続きとんでもないし、これを成立させているトム・クルーズには敬意しかない。大きな画面で観られるべき作品だし、映画がある種のイベントとして成立していた頃の名残を感じさせてくれる数少ないシリーズのひとつであることに間違いはない。

〝身体の復権〟とでもいうような文字通り体当たりのアクションとスタントは、生々しさを伴っている。時折、イーサン・ハントというキャラクターを超えて「トム・クルーズそのもの」としてわたし達の前に差し出される。例えば、キービジュアルにもなっているバイクで崖をジャンプする場面で、トム・クルーズの顔から明らかな緊張感が伝わる一瞬があって、虚実の境が溶け合った独特のスリルがあった。

そんなトム・クルーズてんこ盛りの状態ではあるけれど、他のキャストもとても魅力的で、序盤でクールに狙撃していくレベッカ・ファーガソンもカッコよかったけれど、MCUでのマンティスとはガラリと違うキャラクターを演じたポム・クレメンティエフが素晴らしかった。不敵な笑みを浮かべながらイーサン・ハントを追いかける姿もかっこ良かったし、終盤の赦しと救済がほんの僅かな間にギュッと凝縮されたようなキャラクターを演じる姿には、正直驚かされた。

そんな中でもヴァネッサ・カービーの上手さが際立つ。独特の表情と眼差しも魅力的だが、終盤のスリルある状況での緊張や動揺といった感情の微妙な揺れの表現が段違いだった。『フォールアウト』の時にも印象的だったそのキャラクターの再登場も嬉しかったし、PART TWO での更なる活躍を期待している。

という事で。緻密なストーリー構成に圧倒される訳ではないけれど、様々な場面やシチュエーション(砂漠、空港、観光地、崖、列車等)で繰り広げるアクションの続く3時間はあっという間だったし、あのテーマが流れると一気にテンションも上がるし、どーんと大きなスクリーンで楽しむ作品として充分な価値がある。

そして、同時代にトム・クルーズがいるという事をありがたく享受しつつ、「はよ、パート2を観せてくれ」と思いながら劇場を出るのでした。