色々と粗もあるけれど嫌いになれない、そんなタイプの映画だった。いや、むしろ好き。
消えてしまった娘の行方を追うというサスペンスがストーリーの推進力となって展開は飽きない。〝脳ハッキング〟という荒唐無稽さも(既視感のある描写ではあるけれど)良いスパイスとなって驚きを与えらる効果もあった。どことなく80年代から90年代あたりのB級テイストを感じる画面のルックは、(それをロドリゲスらしいというのが正しいかは判らないけれど)個人的に好きな肌触りだった。
そして、わたしはこれは〝映画を語る映画〟ではないか、とも感じた。今作の物語上で必要不可欠なある仕掛けは、まさにフィクションを映像として表現するという行為そのものだった。サスペンスやスリラー、SF的な要素を盛り込んだこの作品の根底には、映画を作る事のエッセンスが詰まっているように思えてならなかった。そこには映画的興奮があって、そういう視点でみればベン・アフレックというキャストは相応しいものだった。
事件に巻き込まれる刑事、娘を探し続ける父親、そういったキャラクターは実に映画的でもあるし、ベン・アフレックから醸し出される〝信用しきれない正義感〟がストーリー展開にマッチしている。逃亡者を追いかける者としての姿に違和感のないウィリアム・フィクナーとの対峙もスリリングで良い。
物語の到着点はポストクレジットも含めて、驚きもあれば「嗚呼、このパターンね」と思う部分もあるけれど、それでも砂埃舞う荒野でブッ放されるショットガンのシーンだけでもお釣りが来るくらいに興奮した。100分弱という尺含めて、理想的な映画体験と言いたい。
そして、映画館を出た後に頭の中に蒲田行進曲のテーマが流れていたという事を付け加えておきます。