妄想徒然ダイアリー

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歌うサイコロジスト。『40 YEARS OF MORRISSEY ASIA ‘23』雑感。

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アジアツアーの多くがキャンセルされた事で来日も危ぶまれていたモリッシー。前日に日本での目撃情報があった事でまずは一安心したものの、開演するまでは安心出来ない。

開場前のアナウンスはほぼ定刻にあり、しばらくするとスクリーンに『地獄の黙示録』のシーンが流れる。その後、エルビスを始めとするモリッシーお気に入りのスター達の映像が続く。(ああ。そうだった。モリッシーのライブはこうやって始まるんだった)と思い出したりはしたけれど、流石に40分近く続くと不安にもなる。そういった空気、ある種の緊張が頂点に達しようとした刹那、客電が落ちてモリッシーが現れた!

焦らされただけに感情の昂りもひとしお。わたしは後方に位置する形となったが、モリッシーの姿は良く見えた。そして歌声に衰えは全く感じない。それを浴びるだけで至福の時間だったし、それだけに彼の歌声を生で聴く機会があとどれだけあるだろう、という思いも浮かんでくる。

今夜のモリッシーは、何というかご機嫌に見えた。MCもシンプルで優しい感じもある。そんな中であれは〝How Soon is Now?〟だったか〝Half a Person〟の時だったか、「僕はシンガーなんかじゃないよ。サイコロジストなんだ(君たちのような人間の為の?)」というフレーズが個人的にはパンチラインとして印象に残った。スミスを貪るように聴いていた頃、「ああ、これは自分の歌だ」と思った者は沢山いただろうし、わたしもそのひとりだ。あの頃に、人生を生き抜いていく為の処方箋としてモリッシーが紡ぐ言葉は必要なものだった。そんな記憶を引き寄せるようなフレーズにわたしには感じた。

スミスの曲も交えた2時間(映像集含む)は、濃密だった。特に終盤の〝Please …〟から〝everyday is like a Sunday 〟〝Jack the Ripper 〟の流れは圧巻だった。赤い照明とスモークの中のモリッシーのシルエットを見つめながら「ありがとう、モリッシーという気持ちが溢れてくる。わたしも年齢を重ねて来たが、身体の中に溜まった澱みをデトックスされたようなカタルシスもあった。やはりわたしには処方箋なのかもしれない、モリッシーの歌声は。

アンコールは〝Sweet and Tender Hooligan〟だった。こんなものね、「エトセトラ」と叫ばずにはいられない。最後はTシャツを破って鍛えられた上半身を見せつけて、颯爽とモリッシーは去っていった。今度、いつ会えるだろう。また、来てね。

 

ところで。『サウスポー・グラマー』からの曲はもう演らないのかな。結構、好きなアルバムなんですけどね。