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明日も早いし帰るか…それとも??【映画】『シャン・チー/テン・リングスの伝説』雑感。

確かに本編上映前だし、まだ場内も完全に暗くなっていないのでスマホ見ることに目くじらを立てるつもりもないけれど、でも「DUNE」とか「エターナルズ」の予告編が流れているのにそれに興味も示さずポチポチやっている人とは友達にはなれない。

「シャン・チー/テン・リングスの伝説」予告【最強ゆえに戦う事を禁じた、新ヒーロー誕生編】 - YouTube

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

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それほど期待のハードルを上げていた訳ではなかったからかもしれないけれど、いや面白かったですね!

シャン・チーとケイティーのバディ感、シャーリン(演じるメンガー・チャン、ちょっとジョアン・チェンに雰囲気が似ていてミステリアスな魅力がある)のちょっと毒のあるカッコ良さなど若手キャストの溌剌とした活躍も楽しいし、トニー・レオンの気品のある佇まいやミシェル・ヨーの存在感などベテラン勢とのバランスも◯。

ストーリーも直線的でわかりやすいし、親子の確執は主人公の成長物語の要素として類型ではあるけれど、シャン・チーが覚醒していくプロセスにはやはりグッと来てしまう。父親ウェンウーが「獅子が千尋の谷に落とす」的なスタンスを取っているように感じるところもあって、トニー・レオンの繊細な表情の変化による演技もとても良かった。

エンタメ的楽しさと同時に、もう一つ若者が自分のやりたい事を見つけていくことの眩しさのような一面もある。例えばケイティーは駐車係をおそらくは車を運転出来るという理由から楽しく勤めているが同時に将来への漠然とした不安も抱えているはずで、家族からの「バークレーを卒業しているのに…」と別な形の人生コースを期待されている事への静かな苛立ちもあるだろう。そんな彼女が、思わぬ才能を発揮しながらシャン・チーと共に行動していく姿には、若者が将来の道を見つけた姿としてわたしには喜ばしいものとして映った。

またシャーリンも女の子であるという理由から武術を学ぶ事を許されず、だからこそそういった過去を積算するかものように、その悔しさを推進力として人生を設計しているような節がある。ター・ローの村で誰もが平等に訓練している姿は少なからず彼女の人生観に影響を与え、ラストの展開へと繋がっていく。

そしてシャン・チーも過去の贖罪を背負いながら、それが将来の足枷となっていてなかなかその才能を覚醒させる事が出来ない。

そういった若者の将来への漠然とした不安、あるいは現状置かれている環境への不満やネガティブな感情が(かなり特殊な形ではあるけれど)解消されて新たな一歩を踏み出す、その姿には心打たれるものがあった。

エンディング(とエンドクレジット)のあの感じを観ているとMCUの新しいフェーズが始まった事を実感するし、またこうやって新たな物語へと連れて行かれる事への挨拶代わりとしてとてもよく出来ていたと思う。ラストにある人物からシャン・チーとケイティが「これから忙しくなるぞ」と言われるが、それはシム・リウとオークワフィナ自身にも言える事で新たな2人のスターへのエールでもあったし、ホテル・カリフォルニアをカラオケで唄う2人の軽やかさにこちらも思わず微笑んでしまうのでした。