妄想徒然ダイアリー

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緩さの中にある強さを。『羊文学 まほうがつかえる2023 12/14(木)LINE CUBE SHIBUYA 』雑感。

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あと2週間で2023年が終わるというのにも実感はないし、それでも仕事は立て込んだりもしているのだがしっかり有給休暇を取ってライブに臨む。

どうにかチケットをゲット出来たのは幸運だったのだろう。3階席の後方だけれども、ステージはよく見える。例年の企画らしい「まほうがつかえる」だが今回初参戦で、普段のライブとどう違っているのかは判らない。モエカさん曰く「いつものライブは儀式的な感じだけど、これはパーティーにご招待しているイメージ」との事で、なるほどフラットに楽しむ感じだろうか。2曲目からモエカさんが煽る形で1階席の方々はスタンディング状態だったけれど、3階席はほとんど着席していた。最初は少し戸惑いもあったけれど、こういうスタイルで楽しむのもアリだと感じられるライブだった。ステージもシンプルで背景の赤い緞帳と天井から吊るされたシャンデリア(とモエカさんは言っていた)がそこはかとなくクリスマス感を演出している。

新譜のツアーではないけれど、自ずと『12 hugs』からの曲が多くなっていた。そういった新曲と既存曲とがバランスよく配置されていたという印象。というより相変わらずセトリは記憶から溢れ落ちているけれど、一瞬一瞬の音楽を浴びている感覚は強く、派手に踊ったりはしていないけれど自然に揺れる身体に羊文学の音楽が沁みてくる。

3階席から眺めているとフクダさんのドラムを叩く様子をよく見える。わたしはスネアの音が好きなので彼がスネアを鳴らす様子に注目したりもしていた。あと河西ゆりかさんのベースの構え方(少しガニ股気味になるシルエット)が凄くカッコよく思えたし、今更ですけれど彼女のコーラスがまた良いんですよね。

終盤の畳み掛けるような展開にはグッと感情も高まる。今一番フックのある〝more than words〟をさらりと持ってきたあとの〝光るとき〟は、まさに光に包まれるようなカタルシスがあったし、〝1999〟と〝パーティーはすぐそこ〟で一旦締めくくった後のアンコールの〝あいまいでいいよ〟と〝ワンダー〟という流れも大団円感があって良いライブを観たなぁ、という感想に行き着く。

そして、わたしがハッとさせられたのはアンコールの時にモエカさんが発した言葉だった。相変わらずライブ中のMCは緩い(にも程がある)ものだったけれど、最後の最後で「言い忘れていた事がある」と新譜『12hugs(like butterflies)』について語り始めた。自分の腕をクロスさせて肩のあたりをトントンとする事をバタフライハグという、というのをわたしは初めて知った。つまりは不安な気持ちを鎮める方法との事で、そうやって自分で自分をケアする事への思いが込められたタイトル(ジャケット)だという事を知ると、あのアルバムの理解度が変わってくる。

人は結局のところひとりで、それぞれが生き抜く為に様々な障害に対処していかなければならない。ならないのだけれど、それはやはり時によっては過酷なものだ。そういう時には、自分で自分を抱きしめるというライフハックもあるのだよ、と教えられた気がする。それは優しさと同時に厳しさでもあるのかもしれないが、いずれにせよ今夜、わたしは羊文学の音楽を浴びる事によって疲弊した心身が癒された。今のところは、それで良い。