妄想徒然ダイアリー

映画と音楽とアレやコレやを

アンディ、そこにいるの?【映画】『エイリアン:ロムルス』雑感。

f:id:mousoudance:20240920212830j:image

予告編→- YouTube

いやーメチャクチャ面白かったなー!!というのが第一印象。わたしはエイリアン原理主義者ではないし、というよりそもそも2以降はまともに観ていない。確か『プロメテウス』くらいじゃないだろうか、それも記憶が朧げだったりする。だからシリーズを通した設定には疎いけれど、それでも今作は〝正しい〟エイリアンの続編と言ってしまいたい気持ちが強い。

序盤の入り方がハヤカワSF文庫のディック作品を読んでいるかのような肌触りがあって、それだけでもうわたしはこの作品に票を入れていた。まるでほんとに『エイリアン』の数年後に作られたような80年代SF感の空気感があって、尚且つそれがノイズにならず成立している。これって結構、大事な事のように思うのです。オリジナルへのリスペクトを込めながら、フェデ・アルバレス監督自身の個性も感じさせる作りになっていたと思う。 SF、ホラー、スリル、サスペンスが手堅い演出で描かれていてシンプルに面白い。どうしようもない現実からの逃避、〝ここでない何処か、夢の国〟を目指そうとする若者達の物語としての側面もある。

エイリアンの造形はお馴染みのギーガー印の禍々しさと性的モチーフが強調され、見えるようで見えない事でホラーとスリルが増福されている。その辺りは無印「エイリアン」に印象が近い。エイリアンと言えば、という描写もふんだんにあって、そういう意味では「どうだ?コレが欲しいんだろ?」と言われている気もするけれど、そこに嫌味はない。確かに冷静にみれば、細かいところに粗もあるのだろう。でも、それは瑕疵というほどのものではない。

もちろん主人公のレインも存在感があって素晴らしかったけれど、個人的にはアンディにMVPをあげたい。アイデンティティの危うさと〝人として生きること〟の不安定さや残酷さの象徴であるかのような立ち居振る舞いを観ていると、リドリー・スコット連想ゲームという訳ではないけれど一瞬ブレードランナーの事も頭をかすめる。ウェイランドユタニ社とタイレル社が頭の中でごっちゃになったりしもして。

わたしはエイリアン(やプレデターも含めた)を巡る物語の拡がり全てを追いかけている訳ではないけれど、ゼノモースやオフスプリングとのバトルにはこれまでのシリーズへの目配せと総括的な役割があったように感じる。個人的には無印「エイリアン」とこの「ロムルス」で満足しているし、インフレ気味に増殖していく世界観はとりあえず脇に置いていても充分楽しめるものだった。

いや、面白かった。エンドクレジットで流れるH.R.ギーガーの名前を含めて大拍手でした。