妄想徒然ダイアリー

映画と音楽とアレやコレやを

ずっとあなたと踊り続けられたら。「12/20(金)私立恵比寿中学 バンドのみんなと大学芸会2019」1日目雑感。

もちろんアイドルやスポーツ選手に過剰なストーリー性を求める事は正しいとは言えず、とはいえその誘惑は甘くなかなか抗えないのもまた事実。

それを理解はした上で言わせて貰えれば、彼女達を巡る様々は、成長物語の要素としての「苦難」や「乗り越えるべき壁」という言葉で括るには余りにも…余りにも……。

 

という事で行ってきました。

私立恵比寿中学 バンドのみんなと大学芸会2019」

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それなりに師走らしい忙しさでなかなかフルに休みをポンポン取れるわけでもなく、半休という形で仕事帰りに参戦。Ebichu's FULL BATTERY SURROUND というサブタイトルのある今回はフルバンドセット。ホーン隊やバイオリンなどもある体制でなかなか楽しみ。

さて。

ここからはネタバレなどあります。

 

 

スクリーンに映し出されるメンバーカラーの照明。そしてシルエットと共に始まるオープニング。あれ?最近これどっかで観たぞ?

冒頭から五五七二三二〇の曲というなかなかの変化球だ。スクリーンがバサっと落ちると〝family  complex〟が始まる。ここ、カッコ良かったですね。

狭いスタンド席ではあったがブヒブヒ言いながら、エビ中LIVEが始まった事を実感する。あ、そうだペンライト出さなきゃと鞄から光る棒を取り出し水色を点灯させてみたものの、不格好に上げ下げしているだけの自分に嫌気がさして一度引っ込めてしまった。

わたしが再びペンライトを手にしたのは〝放課後…〟の時だ。割とすぐでしたね。冒頭のシャウトは真山さんとりったん。そこに安本さんの姿はない。しかし、わたしはりったんのシャウトに心を震わせられることになる。

言われてみればぁぃぁぃの代わりにそのシャウトを担ってたのは彼女だったか。わたしが実際にその姿を観たかどうかは記憶が曖昧だが、おそらく当初は「苦しそうに歌うりったん。頑張れ!」的な視線を送っていたと思う。

しかし、この夜の彼女は違っていた。この曲に限らず自信をもってステージに臨んでいるように感じる。もちろん、上達した歌唱力もその自信を成り立たせる要素のひとつだが、それ以上にエビ中というグループを引き上げていこうとする強い意志がわたしには見えてきた。そう簡単にこの船を沈ませない、そんな思いがあるという全く持って勝手な妄想にほかならないが、しかしそう思わせてしまうだけのサムシングを彼女は獲得している気がしてならない。

新曲〝愛のレンタル〟シンガロン・シンガソンそして〝紅の詩〟などなど、パートの多寡に関係なくグッと引き込まれるようなフレーズがわたしの心を射抜く。

いやもちろんりったんばかりを観ていた訳ではない。みんな本当に歌が上手くなった。真山さんやひなたちゃんは元々のポテンシャルを高めてレベルアップさせているし、美玲ちゃんの表現力も素晴らしい。そしてぽーちゃんの伸びやかで特徴的な歌声も今のエビ中をリードしていくパズルのひとつとして印象的だ。

LIVEも中盤になった頃、ちょっとしたブレークタイム的にモニターに流れる映像。公園のような場所にいる誰かの足元とエビ中ちゃん達のリハーサル風景がカットバックされていく。

やがてその誰かが誰であるかは明かされる訳だけど、途中である程度の想像はついたものの彼女の姿が映し出された時は思わず息を飲んだ。

軽々しく「元気になった」とかあるいはそうでなかったといった事を言うつもりはない。しかしそれでも彼女の姿をこういう形でわたし達に見せた事については、今のエビ中を巡る状況を「悲劇のストーリー」にしないという運営の意志を感じた。ややセンチメンタルな言い方を許してもらえるならば、6人の繋がりを感じさせる演出としては良かったのではないか。

このコーナーでは5人は椅子に座って歌声をしっかりと聴かせる。いや何度もいうようだけど本当にみんな歌上手くなったなぁ。〝曇天〟、最高でしたよ。

そうこうしていると、エビ中に入った頃と思われるメンバー達の自己紹介映像が映し出される。みんな小さくて幼いが、彩花ちゃんの独特の間は(当たり前だけど)この頃から出来上がっていたんだな、と感心してみたり。最後はかほりこの初々しい様子が(結構長めに)流れる。ほっこりすると同時に時の流れと2人の成長に言いようのない感情が沸き起こる。このふたりが将来このチームをグイグイ引っ張る頼もしさを発揮するようになると当時イメージ出来ていた人間がいただろうか?

そして、そこから始まるHISTORYは…あれはズルイ。隣の女の子はズルズルに泣いておりました。

後半は新旧織り交ぜたアゲアゲ系の曲が中心。〝フレ!フレ!サイリウムではトロッコで会場を回ってきてくれたものの、わたしの位置からはほとんど見えなかった。でも、こういうLIVEも久しぶりだったので、それだけで楽しい。

〝PANDORA〟のベビメタや〝オメカシ・フィーバー〟ハロプロといった雑食的な楽曲づくり、そのバラエティ感もエビ中の魅力かもしれない。〝サドンデス〟ではバンドメンバーも巻き込んだ遊びもあった上で、「立ち上がれ!私立恵比寿中学ーーーー!」になだれ込むカタルシスを堪能。本編ラストは新譜『playlist』の中でも個人手に大好きで新たなアンセムとなりそうな〝ジャンプ〟で締め括られた。わたしはアルバムを聴いている時から終盤の「今だーーーーー!」はりったんだと思っていて、事実この日のLIVEでも彼女がそのパーを担当していた訳だけど「あのパートは本来、彩花ちゃんだよ」とブラックタイガーの人に教えられてちょっとした驚きを感じたり。

アンコールではこれも大好きな〝ポップコーントーン〟(そういえば新譜、たむらぱんさんの曲なかったなぁ)が観られたし、オーラスの〝感情電車〟では、ぽーちゃんの更なる成長をビシバシに感じながらステージを眺めていたけど、やはり5人で連なって電車になる場面をみると「少ないな」と思ってしまい不在の存在を強く意識してしまう瞬間がちょっぴり寂しさも増幅させて、でもそれはこの楽しかった夜の締めくくりには相応しかったのだろう。

いくら大好きでいたとしても、いつかは消えてなくなるかもしれない。永遠なんてないし推していたものが目の前から去っていってしまう覚悟をわたし達は持っている。だからわたしたちに出来るのは、ただ身体を委ねる事だ。そう、踊っていればいい。踊っていられるのなら幸せなんじゃないかな。

いくつになっても。『12/17(火)フィロソフィーのダンスGlamorous 4 Tour ファイナル@新木場Coast』雑感。

何年か前のフィロのスちゃんたちのネット配信番組を観ていたら、ハルちゃんが「ねぇねぇ、みんなはさ、いつまでこのグループやるの?」とある意味身も蓋もない事をあっけらかんと聞いている場面があって彼女の当時のアイドルに対するスタンスが垣間見えた気がしてとても印象に残っている。

という事で行ってきましたよ!

Glamorous 4 Tourファイナル@新木場Coast

何かとせわしなくなる時期で、なかなか行ける現場も限られてくる。結局ツアーもこのファイナルに賭ける感じになってしまって、普段LIVEのネタバレなどはそれほど気にしないタイプだけど、今回はこのラスト一発にかけていたこともあり可能な限り情報を仕入れないで臨んだ。

何やらグッズには限定アクキーなるものもあるようじゃないか。それはちょっと欲しいね。

f:id:mousoudance:20191217215623j:imageこのサインボードに名前があるの、良いですよね。

という事で先行物販に並ぶ事約30分、ランダムに選ぶアクキーはとりあえず4つにしておいた。運試しだ。これで一発メンバーが揃うかもしれん。そして結果は…。

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残念ながらおとはすが揃わなかったけどあんぬちゃんの限定を引いたので幸先は良いハズッ…!

FC先行で手に入れたプレミアムチケットはびっくりするほどの良番で、いや行っちゃって良いんすか?最前?という感じ。と思ったが入場待機中にとてつもない尿意に襲われて加えて開場が少し押しちゃったもんだからわたしの膀胱は限界に達しそうになっていっそここで楽になってしまおうかとも思ったが、そんな矢先カツマタさんの「もう少しお待ち下さい」アナウンスがあったお陰でわたしのメンタルも落ち着いて尿意も治まったという、これは事実。

20分ほど押して入場となったわたしはトイレへ駆け込み会場に入った。そして最前ではないものの三列目くらいの……

とこうやってLIVE前の事をグダグダと書いているのはLIVEが良過ぎて書くことがないからだ。

最高でしたッ…!体感1秒!(byあんぬちゃん)

これで全てと言ってもいい。

ソールドアウトという訳ではなかったようだけど、それでも新木場Coastは人で一杯で、ナイル・ロジャースの曲が大きくなったかと思うとステージを覆っているスクリーンに4色のライトが当たっている。

そして浮かび上がるシルエットから始まる〝アイドル・フィロソフィー〟!!はい、もうここでおじさんの涙腺は緩んだ。LIVEの成功はアレでもう保証されたと言ってよろしいのではないでしょうか。

表現する人たちがある時点で「あ、この人ステージひとつ上げたな。ランクアップしたな」と感じる事が時々あって、今日の4人にはそんな印象を持った。ツアーを観てないから何とも言えないけど、9つのライブをやってきた自信とプライドのようなものを感じるパフォーマンスだったんじゃないだろうか。

まばらな記憶を頼りに…。

〝バイタル・テンプテーション〟のフルバンドならではのグルーヴ感がググっと感情を昇華させるその瞬間に〝ライク・ア・ゾンビ〟に繋ぐという、このメドレーもかなり卑怯だったし、奥津さんが涙を堪えながら「大事な曲です」と紹介した〝シスター〟もまた素晴らしく。この辺りからメンバーの目が潤んでいる時間が多くなってくる。彼女たちの目がキラキラしていたのはラメ入りメイクのせいではない。

ハルちゃんのアカペラで始まった〝ベスト・フォー〟も落涙必至で、記憶が混濁しているけど奥津さんも感極まっていたんじゃないかな。

MCではいつもより4人のアツイ思いが溢れ出ていた。奥津さんは「これまで9回ツアーやってきて今日のファイナルを迎えて…。楽しい事はあっという間に過ぎちゃうから…。一瞬一瞬を見逃さないで、目を見開いてしっかり記憶に焼きつけてね」と過ぎ去っていく刹那の寂しさとそれ故の美しさを語る。

あんぬちゃんは「かつて『大きな船にのったつもりで』って言ったけど、本当にどんどん大きな船になって…。」と一歩一歩重ねて進んできた過去を思いながら、これからの未来を語った。

ハルちゃんは「わたしはアイドルに興味もなくて、そんなわたしが今ではフィロソフィーのダンスをやってて良かった、と思えてる。このグループでやってきて良かった!ずっとフィロのスでいるよ」とまさかの一生フィロのス宣言でわたしたちを泣かせる。

「いいMCの後だと言うことなくなっちゃう」と言いながらのおとはすは「今までこの学校(職場)に来て良かったって思う事のない人生だったけど、今はこの居場所があって良かった、と心から思える」と端っこを歩く者たちへのエールにも聞こえる彼女ならでは思いを発した。

それぞれがそれぞれにフィロのスというグループに賭けてきた人生が垣間見えるようなMCでとても胸に迫るものがありました。

だからという訳でもないけどこの夜の〝ライブ・ライフ〟はいつにも増してエモーショナル光線が飛びまくっていて、思わずコールにも力が入った。あーんぬ、あーんぬ叫んでたら喉が枯れておとはすのコールでカラッカラッになってしまったが、それだけアツイ思いを掻き立てるようなライブだったという証だろう。

いつもはなかなか参加できない〝ダンス・ファウンダー〟のラインダンスも自然と隣の人と肩を組めたし、ホント会場がハッピーな空間になってました。

アンコールは去年のステラボールでハルちゃんが感情を昂らせていた〝ジャスト・メモリーズ〟から。今回ハルちゃんは泣いていないようだったけど、その代わりに中盤以降おとはすが泣いていた。泣きじゃくっていた。そして〝ハッピー・エンディング〟による大団円。途中でメンバー達がそれぞれの思いを告げていく中、最後のおとはすの番になって「わたしの言う時間ないじゃん!」となったのもご愛嬌。

最後のMCでは重大発表ということで、メジャーデビューが発表された。銀テープの発射とともに4人の感情も爆発したかのようで皆、それぞれにこみ上げるものを隠しきれないでいたけど、特にあんぬちゃんが泣き出した瞬間には心を鷲掴みにされた。

メンバーの中でもアイドルというものに1番の思い入れがあったであろう彼女。ステージ上では、しっかりとした芯のような強さを持っているような彼女が、堰を切ったように泣きじゃくる姿を見ると本当に良かったなぁ、という気持ちになる。

最後はBGMに流れていた〝はじめまして未来〟に皆んなが歌い始めて、結果ワンコースやったんでしたか?こういう終わり方もまた楽しい。

あとはおとはすが「ビルボード一位になる!」といってジャンプした時の可愛さや「それじゃまたねっ…!」と颯爽とステージをはけていくあんぬちゃんの背中のカッコよさなど語り始めるとキリがないのでこの辺にしますかね。

プレミアムチケット特典の握手会は高速で4人が眩しくて最高という言葉しか伝えられなかったけど、最後の奥津さんが長い間(ある意味体感1分!)手を握ってくるあたりの小悪魔ぶりにやられながら会場を去りました。

という事で、もっともっと大きいステージで暴れ回るベスト4、グラマラス4を観ていきたいですね。ハルちゃんが言うように「バ◯ァになってもフィロのスを続けるよ」との事ですので、わたしも長生きをしなければなるまいね。

(おまけ)帰りの新木場駅前ではアイドルグループらしき女の子が路上LIVEをやっていた。紙に書かれていたスパークスピーカーという名前をわたしは知らなかったが、そんな事とは別にここにも夢を追いかけている姿があることにセンチメンタルな気分になる、そんな夜だった。

あなたがあなたであるために。『毎日がクリスマス〜12/15(日)眉村ちあき@横浜赤レンガ倉庫ホール』雑感

もしも眉村さんが眉村さんなら誰も眉村さんじゃないし、誰も眉村さんじゃなかったら、眉村さんはいったい誰なのか。といったのは谷川俊太郎でしたっけ?

という事で行ってきました。

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『毎日がクリスマス〜眉村ちあき

そう。眉村さんによれば今日12/15こそがクリスマスであって我々はその目撃者、いや新たなクリスマスの誕生の立ち会い人、出産見届け人ということになった。

着席スタイルのLIVEはどことなくぎこちなさの空気が会場全体に流れていたような気がしないでもない。立っていいのかどうなのか、事前のアナウンスで「立ってもいいよ」と言われつつもどうしたものかという探り合いが客席には広がっていたような気がする。もちろん今までも着席のライブはあったしそんな事お構いなしに自分の世界を拡張していく眉村さんな訳でしたけども。

LIVEも久しぶりでどの曲が久しぶりだったかも怪しいけど〝コカ・コ○ラのスリッパ壊れた〟は割と久しぶりの曲と言って良いのではないでしょうか。最早ネタ化している〝スーパーウーマン…〟のギターソロも楽しいし、そういったお馴染みの曲と〝壁見てる〟や〝スーパードッグ・レオン〟といった新し目の曲とがバランスよく配置されたセトリだった印象で、全体的にはグワワーッと感情をドライヴさせていくというよりもそっと優しくわたし達を包み込むような時間を作り出していたLIVEだったとように感じた。

「イルミネーションを見ると泣きたくなるの。ならない?」といった言葉は眉村さんとわたし達を繋ぐ(或いは共犯関係に持ち込む)マジックの呪文のようにも思えて、時々こういうハッとさせられる事を言うので困る。いや困らないけど。

赤レンガ倉庫のきらびやかで派手な飾り付けに負けないイルミネーションを作るために、観客からピックアップした「電球たち」を集めて行進する姿や〝スクワットブンブン〟を始めようとしながらドンドンと脱線していく導入のアドリブなども勿論楽しかったけれど、この夜の〝本気のラブソング〟はまた格別で。

暗闇の客席を練り歩く眉村さんの姿は勿論はっきりと捉える事は出来ない。出来ないけれどわたし達の目にはハッキリと彼女の姿が見えていたし、また彼女もわたし達ひとりひとりの目を見ていた。とそういう面倒くさいヲタクの戯言のような事を言ってしまいたくなるほどの体験だった気がしている。上手く言えないですけど。

新曲であるクリスマス・ソング(結局タイトルは何だったのか。ラジオDJに恋して想像妊娠?)も何だか楽しい曲。事前講習の成果もあって「正三角形」「正六角形」というコールもやっていくうちに快感を伴うようになってくる。この三角形や六角形を作る時の眉村さんの仕草がまた可愛くてですね…。

LIVEで観るのは下手したら初めてかもしれないというくらいのレア曲〝dear my family〟も良かったですね。静かにスッと滲み入るような歌声が素敵でした。f:id:mousoudance:20191216052415j:image

あとは、あとは…もう楽しかったって事で良いですか?という事で久々に撮った写真を並べて終わりにします。

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あらゆる表情や仕草が愛おしくかわええ。

この空を跳べたら、なんて。【映画】『ジュマンジ/ネクスト・レベル』雑感。

そんな風に思った事は多分ないけど、「さわやか万太郎」のような人生が送れたら良いなぁ、とは子供の頃に夢見ていたような気はする。

スポーツ万能で人望もある、男気もあってケンカも強い。そして可愛い許嫁もいる。そんなチート満載の人生を。

という事で観てきました。

ジュマンジネクスト・レベル』

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予告編→YouTube

確かに前作にあった〝限られた3つのライフ〟をどう使うか?のドキドキ感やカタルシスと比べると少し物足りないような気がしないわけではない。

ないけれど、やっぱり前作に引き続きのキャラクター達が画面に出てくると楽しい。いわゆる〝あいつらにまた会いたい〟という欲求をほどよく満たしてくれる。

シリーズモノに新たに加わるキャラクターというのは、観客にとってノイズとして扱われたり軽んじられたりするケースが多いが、今回の新キャラクターはその辺りを上手く処理していたと思う。

というかダニー・デヴィートとダニー・クローヴァーという大ベテランがその存在感を遺憾なく発揮して、いや実に良かった。

この作品の魅力のひとつには「自分ではない誰かになる(好むと好まざるな関わらず)事」へのある種の憧れというものがあり、そしてプレイヤー達がそのキャラクターに自らの人生=ライフを託して再生している様というのが楽しく、そして心を動かす。

そういう意味で今回はWダニーの振る舞いが、多くの笑いを生むとともに、わたしの琴線にビンビンに触れてきた。

2人の演じるエディとマイロというキャラクターは歳を重ねて、人生の終盤を迎えている。身体も言うことを聞かず、過去を振り返れば悔いるような思い出ばかり浮かんでくる。そんな2人がジュマンジの中で別なキャラクターにならながら、その関係性を見つめ直していく。そう、この作品にあるのも赦しと救済の物語であって、そんなものを目の当たりにして泣かずにはいられない。

2人の現実の姿は時間とすればそれほど多くはない。しかし、別なキャラクターになっている時にでもそこにはダニーとマイロの姿がわたしの目に浮かんでくる。いやー、まさかダニー・デヴィートのドヤ顔にやられるとは思いませんでしたよ。

もちろん、オリメンたちの活躍も楽しい。ドウェイン・ジョンソンケヴィン・ハートのコンビは鉄板で楽しく、ふたりの息のあった相性の良さも伝わってきてどんな場面でも楽しいし、なんだったら泣きそうにすらなってくる。

ジャック・ブラックのあらゆるキャラクターを使い分ける芸達者ぶりも素晴らしいし、そしてカレン・ギランちゃんはチャーミングでカッコいい。「ヌンチャク」の言い方、可愛くてヤバいレベル。もうちょっとアクションみたかった気がするけど。

という訳で次作があるのかないのか分からないけれど、あればやっぱり観に行きたいですね。果たして、今度はどの世界で会えるのか。

(おまけ)

あ、そうそういつも通り字幕で観たわけですが、なるほどオークワフィナさんのハスキーな感じはちょっとファーストサマー・ウイカさんに合ってる感じもして。てかこの人の役、めっちゃ重要な役じゃん!

ありのままでDDT決めるのよ。【映画】『ファイティング・ファミリー』雑感。

まさに今ブレークしていると言っていいファーストサマー・ウイカさん。彼女の事を知って半年程度だが、色々と見ていくうちにとても自己分析能力が高くまたプロデュース力も優れた人という事が段々と伝わってくる。

もちろん彼女の現在は天性のものだけで成立している訳ではなくて、その影には色んな汗や涙が流されてきたはずで。

きっと、そういった事を疎かにしてこなかった者にこそ、道は開けて行くのだろう。と同時にそういった道が開ける者には、スペシャルなサムシングが備わっているのかもしれない、とも思う。

という事で観てきました。

『ファイティング・ファミリー』

予告編→https://youtu.be/YmzeFTqsCq4:『ファイティング・ファミリー』予告編

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わたしのプロレス体験は古舘伊知郎が実況していた頃の新日本プロレスで止まっている。それ以降は各種メディアに流れている情報をチラホラと目にしていた程度だ。

だからプロレスについてもWWEについても深い思い入れがあるという訳ではない。もちろんWWEがレベルの高いエンターテインメントを作り出している団体だということは知っている。マクマホン家を巡る物語が過剰な語り口で繰り広げられている事やもちろんロック様経由で色んな映像を目にしたりはしている。でもそんな程度だ。

そんなプロレス者でないわたしだが、この映画を観てどうなったかと言うと…。

落涙ですよ!例えではなくて実際目尻から水滴ポロリですよ。

おそらくそれはこの作品がワンスアゲインの物語としてよく出来ているからだと思う。

主人公であるサラヤ/ペイジは勿論のこと、兄のザックやペイジのトレーナーであるモーガンのワンスアゲインな要素も含んでいて、そのバランスが絶妙(同期の女子レスラー達にも物語がある)であらゆる場面で涙腺が刺激されクライマックスでは完全に泣いていました。

特に兄のザック。彼が成功して夢を掴んでいく妹に対して抱く複雑な感情をジャック・ロウデンが巧みに演じている。ふとした表情の変化でそれを伝えてくる彼の演技は胸に迫るものがある。

そういったワンスアゲインの物語に心動かされる理由には、「持つ者と持たざる者を隔てる何か」について描いている事も理由のひとつかもしれない。ペイジとザックを隔てる「特別な何か」、あるいはペイジと同期の女子レスラー達との間にある軋轢(しかもそれが双方向的)、ロック様とモーガン…などなど。

そういう視点で見れば両親とペイジも、ナイト家長兄のロイとザックも、はたまたザックの道場に通う生徒たちと社会全体にもそういう隔たりが見えてくる。

この作品がわたしの心を撃つのはそういう「他者との隔たりを感じながら、それでも、もがいて生きていく姿」が描かれている所なのかもしれない。

と同時に「スターにならなかった/なれなかった人生」が無価値ではなくて、そういった人生にももちろん輝きはあるのだ、という事も感じさせてくれるそんな視点がある事も忘れてはならない。ザックの人生は決して無意味ではない。そんな赦しと救済が一気に訪れるラストのカタルシスは素晴らしかった。

ペイジを演じたフローレンス・ピューは初めて観たけど不思議な魅力のある人でとても良かったけれど、やはりザックを演じたジャック・ロウデンを今作のMVPとしたい。

類型的になってしまいそうな役に観客が感情移入出来たのは、彼のとても繊細なアプローチがあったからこそだろう。複雑な葛藤を嫌味なく消化して表現していて、とにかくトライアウト以降の彼には泣かされっぱなしだった。

トレーナー役のヴィンス・ヴォーンも素晴らしかった。彼の演じたモーガンもまた「スターになれなかった人」であり「特別な何かを持っていなかった人」で、そんな彼がスター候補生達を鍛えていく姿にグッときてしまう。ジャーニーマン/職人ときて自分の役割を全うしていく矜持のようなものに胸を打たれてしまう。

監督のスティーヴン・マーチャントの特徴なのかどうか判らないが全体的に台詞ではなく僅かな表情の変化などによってその心情を表現するスタンスがこの作品には多く見られ、それがとても効果的だったが、特にこの2人の演技はそれを裏付けるものでとても良かったと思う。

という訳で、久々に拾い物的な嬉しさのある快作でした。WWEが観たくなる。

新しい令和のリーダーズ、かもしれない。12/7(土)『新しい学校のリーダーズ主催 令和元年度第九回はみ出しフェスティボー@渋谷cyclone』雑感。

改めてSUZUKAさんの昭和歌謡との相性の良さを強調するつもりもないけれど、こんな動画がアップしてされていて。

https://youtu.be/59bnq4wlGx8:「どうにもとまらない」by Klang Ruler/新しい学校のリーダーズ

いやSUZUKAさんやMIZYUさんのボーカルも勿論素晴らしいんだけど、コーラスが絶妙ですよね。こういう発見があるので対バンは楽しい。

という事で行ってきました。

『令和元年度第九回はみ出しフェスティボー』

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いきなり禍々しい絵が飾ってあってこれはSUZUKA…いやクリステル涼花作のようだ。そしてこれがTシャツになっていて物販で売ってる訳だけど、いや勿論買った。

入場するといつものようにDJ RINによるお出迎え。あれ?パーマかけた?うん、かわええ。山下達郎の「クリスマスイブ」が暮れの夕方に染みてくる。

そしていつものようにお習字が張り巡らされてる訳ですが…f:id:mousoudance:20191207213348j:imageん?撮影可だと????

と言いながらやはりLiveに夢中になってるとなかなか撮る隙もなくて。というよりこの日の渋谷cycloneはパンパンでなかなか身動きの取れない状態。OTA氏の指示でDJ RINより「入り口付近詰まってますので奥の方もう少し詰めてください」的アナウンスが。

そうこうしているうちにミッションチンポッシブルが登場。パロディポルノの邦題みたいな名前の人で勉強不足のわたしは初見だが、盛り上がる。

続いてMJの〝BAD〟にノッてSUZUKA…いやクリステル涼花が颯爽と現れる。f:id:mousoudance:20191208000607j:imagef:id:mousoudance:20191208001328j:imageふはは。カッコいいじゃねーか!!オープニングアクトというよりはこれから始まる『はみ出しフェスティボー』の開幕をアジテーションするかのようなアツさで宣言したかのようでもあった。

再び登場のチンポッシブルとお絵かき対決。確かテーマは「二千年後の人類」だったかな?f:id:mousoudance:20191208004201p:imageなんかディストピアを感じる絵だけど、「この頃には女性も男性も区別がないそんな世界になってる」という彼女なりのユートピア観の現れである事がわかって少しドキリとさせられたり。

Klang Ruler

スタートに何度か曲を止めるようなトラブル。何やら機材を調整しながら2度ほどそんな事があって、よく原因は判らなかったけどなんかギターの人がやらかしてた感はありつつ始まったステージだけど、いや良かった。こういうジャンルです、と上手く表現できるボキャブラリーも知識もないが独特の化学反応が産み出すグッドミュージック、とでも申しましょうか。元々男女ボーカルのグループが好物というところもあって結構気になる存在になりそう。ちょうどわたしの位置からは蜂須賀桜さんが視界の中心となっていて彼女の持つゆったりとしつつも芯があるというかどこか凛とした美しさを感じるところに落ちそうになる。

リーダーズとのコラボはもちろん〝どうにもとまらない〟で、いやーカッコよかった!!!どこを切っても褒めるところしか出てこない金太郎飴状態だが、敢えていうなら「あーああーあー」というコーラスがツボです。yonkeyさんの声がまた良いのよ。不思議な揺らぎを持つ波長が心地よい。

そしてリーダーズちゃん達の踊りも当たり前のように素晴らしい。リズムやメロディに合わせてガッガッガッと動く身体、特に頭のアイソレーションのキレの良さ。控えめに言って最高でしたね。

ピラミッドス

頭にピラミッドの被り物をして出てきた時の良い意味でのおふざけ感が個人的には好印象。そのままディーボみたいに被ったままやるのかと思ったらあっさりと外すあたりも良い。

オリエンタル、エキゾチック…そういった言葉が浮かぶが、そういったある種の特殊なジャンルをやっているという事に気負いを感じないサラリとしたスタンスがまた良い。

そして茶番。ベタな転校生ネタやエアポールダンスなどの茶番は楽しく、こういうユーモアのセンスはどこか懐かしくもある。

こうしたコントの流れやクラリネットおじさんがフロアに降りてきたり…といった部分には、一見わたし達に馴染みのないジャンルにすっと入り込めるという効果があってホント初見だったけど楽しめました。

最後は静かに去りまーす、とゆっくりとしたパントマイム的動きで消えていきスクリーンも一旦降りたのだが、そこへリーダーズが登場。

「ピラミッドスパイセンともコラボを!」という訳で全員でピラミッドを。せっかくなので写真を、と思いましたがなかなか上手く撮れず…。f:id:mousoudance:20191208070242j:image全体撮れてないじゃん!

新しい学校のリーダーズ

転換時間の間にも人は増えていったようにも思えてほとんど身動きは取れないくらいに埋まっている。

冒頭のあたりは記憶が飛んでいる。赤い照明の中4人が出てきたような気がするがそれは幻ではなくて本当の出来事だよね。身動きが取れない中でも可能な限り身体を揺らし手を振り上げて彼女達のステージから放たれるエモーションの塊のようなものを浴びる。時折ステージのメンバーがほとんど見えないような時間があっても同じ時間を共有している事でLIVEに参加している歓びを感じる。

〝透明ボーイ〟の始まり方、何度体験しても、好き。パンパンのフロアで盆踊り的に手が振られている様はまさに祝祭の空間であって、自然とアドレナリンが分泌されていく感じが自分でも判る。ケミカルなんて必要ない、これぞまさに合法な快楽。

新曲の〝ケセラセラ〟がまた良くてですね。スタンドマイク4本並べて激しい踊りは控えめだけど、シティポップ感が素晴らしい。yonkey作詞作曲とな??崎山くんだったりこういう才能を共犯関係に巻き込んでいくところ信用できる。

この日も色んな発見があって、どの曲だったかな、MIZYUさんが忍者の立て膝みたいな感じでステージ中央にいて、肩で息をしながらじっとしている場面が脳裏に焼きついている。あれカッコよかった。

KANONさんの髪振り乱しながらオタ芸っぽい動きするのは〝席替えガットゥーゾ〟だったかな?あれって連獅子みたいでもあるし、そう思えば音が止まってダンッ!ダンッ!ってビートに合わせて動くところは歌舞伎の見栄切ってるのに近いのでは、と思ってもみたりして。もしかしたら何度も同じ場面観ているかもしれないし、同じような事言ってたかもしれないけど、まあ彼女達のパフォーマンスを観る度に色んな気持ちで衝撃を受けるという事で。

〝オトナブルー〟での昭和歌謡グルーヴは最早お手の物という印象すらあってSUZUKAさんのユーモア溢れる中にも揺らがない強さを持つ歌唱がたまりませんね。ハッ!

〝エンドレス青春〟から〝迷えば尊し〟はもう間違いのない流れ。ラップ部分ではクラングルーラー、ピラミッドスというコール&レスポンスも取り入れて、あれがアドリブだったのかどうかは判らないけど今宵の宴を讃えるような高揚感があってとても良かった。そして、〝迷えば…〟で掲げられた多くの手はこの日もエモーショナルな空間を作り出す。ちょっと思い出すだけでも目尻に水滴が。

アンコールでは〝学校行けやぁ゛〟を。SUZUKA Tシャツを着ての登場。タボっとした着こなしがかわええ。写真ちゃんと撮れてないけど一応。

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という事で今回も楽しかった。ピラミッドスパイセンはひと世代くらい上のような感じだけど、クラングルーラーパイセンは同世代のように見える。

さっきの楽曲提供の話じゃないけどそういう同世代との共犯関係が増えていくのは良いですね。もはや音楽シーンと言われるものはないかもしれないし、いわゆるムーブメントのようなものはもう起きないというような事はよく言われている。しかし、それを言ってるのは昭和や平成の人間だ。これからの世代はそんな事、露ほど思っていないだろう。

もしかしたら今夜、渋谷サイクロンに集まった表現者達(ミッション・チンポッシブル含めて)は令和時代の新しいリーダーズになるのかもしれない。なんかそんな事をふと思う夜なのでした。

あ。ちなみにゲットしたお習字は終演後のトイレで見つけた「出し切れ!」です。

どうせ消えてしまう未来でも。『11/27(水)新宿系ガールズミーティングツーマン BILLIE IDLE®︎ /CARRY LOOSE@新宿LOFT』雑感。

かつてあれほど夢中になっていたモノに急に興味がなくなる事はよくある話で。まるで魔法が解けたみたいにパタリと、夢から醒めたかのようにソレから離れていく経験はわたしにもある。

しかし、ではその夢中になっていた時期が嘘だったかといえばそれもまた違う話で。その場その時、その一瞬一瞬は真実であり掛け替えのない出来事だったのは間違いないのです。

という事で観てきました。

『新宿系ガールズミーティングツーマン

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約2ヶ月前の眉村さんとのツーマンがファーストコンタクトで、まさにその日からハマったBILLIE IDLE ®︎は、わたしにとっては「まだ始まっちゃいねぇよ」状態なのだが、残念ながら今年いっぱいで解散となってしまった。

したがってわたしが彼女達のステージに触れられる機会は今回とラストLIVEしかない。もちろん長い間彼女達を追い続けてきた人たちには遠く及ばないが、わたしはわたしでわたしなりにBILLIE IDLE ®︎という存在を、この貴重な時間を、その一瞬一瞬を身体に刻み込むつもりで新宿LOFTに向かった。

やがて消えてしまうというゴールが分かっていても、今この時の輝きを網膜に焼き付ける為に。というのは少しセンチメンタル過ぎるだろうか。

CARRY LOOSE 

わたしはWACK界隈には明るくないが、かつての全裸PVといったトピックは目にしていたので、その頃から何となく色物的で露悪的な所という先入観を長い間抱いていた。

しかし何というか環境が状況を変化させるというか、やはりいま勢いのある運営だなという印象を抱かせるサムシングがありますね。そういうところへ輝く才能を持った子たちが集まってくるんですかね。いや良かった。

途中のMCでポニテの子(ユメカさん、かな?)が「これだけ解散経験している人が集合した対バンもないよね!解散って嫌だよねー!」と言っていて、なるほどこの子達にも当然歴史があり、その積み重ねがあって今があるんだなと。何というかそういう下地・基礎といった裏付けを感じるステージだったように思う。技術的に飛び抜けているとかそういう事ではないが、指先の動きにまで神経が通っている感じ。まあとにかく可愛くて曲もカッコいいし、良いですね。ボブヘアーの子、ウルウ・ルさんですか?推しそうです。

BILLIE IDLE ®︎

はー。とにかく楽しくてカッコよくて可愛くてそして、切なくて。あっという間の時間だった。セトリなんて覚えていられない。パンパンに詰まったLOFTで脳汁はじけました。

初めてLIVEを観てから2ヶ月。その2ヶ月でわたしの身体は〝彼方へ…〟で涙腺を刺激されるようになってしまった。逆に言えば、2ヶ月前までわたしの人生にBILLIE IDLE ®︎は存在していなかった訳で。なんと勿体ない話であるけれど、その過去は取り戻せない。わたしに出来るのは今目の前に存在している彼女達の輝きを自分の中に刻み込む事だけだ。

MCでウイカさんが言うように、もしかしたらこの新宿LOFTが最後の現場という人もいるだろうし、この夜を逃すと2度と観ることのできない曲もあるかもしれない。いや例え同じ曲をやったとしてもこの夜の瞬間は2度と訪れない唯一無二の出来事だ。

〝どうせ消えてしまう命なら…〟でピンスポを浴びていたヒラノノゾミさんも、〝anarchy in the music scene 〟仏頂面パートでフロアを眺めながら思わず笑みが溢れ落ちてしまったウイカさんも、この日この瞬間だからこそ生まれた生々しい刹那だ。時に狂気に満ちた瞳で熱唱するモモセさんも、ダイナミックな動きとキュートな歌声のアキラさんも、リフトされたヲタクのケチャを受けるとも流すともせず巧みな表情でやり過ごすプー・ルイさんも、全部この夜にしか観られない姿だ。その一瞬一瞬がオンリーワン。

〝単調なエレジーはもちろん初見で、実はそんなに聴いてない曲だったりしたけど、いや良かったですね。妖艶な動きが感情をかき乱すようなところもあって。もしかしたらこれが2度と演らない曲かもしれない。だから一瞬一瞬を捉えるしかない。かつて神聖かまってちゃんの〝の子〟さんが言っていたように。「今ッ!今なんだよッ!クソが!この時をッ!この一瞬を!!!」

新曲でありラストシングルの〝LAST ORGY〟もそうだ。いや何というか、これがまたよくてですね。もちろんライブで観るのは初めてだけど、思わず(これはLIVEで育っていく曲だ!)と面倒臭いヲタクみたいな事を感じてしまうくらい素晴らしかった。メンバーみんなの表情が良いんですよ。これがあと一回しか(という保証もないが)観られないって、本当どういう事だよ??って話です。

いや、アレですね。フト思う訳ですよ。やれセトリがどうだった、今日のライブはイマイチだった、最近マンネリ化だなぁ…などなど感想が持てるうちが幸せなんだな、と。推しが存在しているという事実だけで御の字じゃないか、と。

どんなグループだっていつかは終わりが来る。極論を言えばどのグループもやがて訪れる終焉に向かってその道を進んでいるようなものだ。そして時にそのゴールは突然現れてしまうという現実。

だから干して良い現場などない。あるわけがない。だけど現実問題として全ての現場へ行ける人は僅かだ。だから自分が巡り合ったLIVEは2度と観られないという覚悟をもって臨むのが正しいのかもしれない。大げさにいえば。

〝MY WAY 〟はウイカさんの「それでは最後の曲です」という一言から始まる。この始まり方も好きだ。掌を掲げ、手を鳴らす。アキラさんがフロアを煽る。楽しさと同時に終わりが近づいているという寂しさ、切なさが同時に襲ってくる。そして終わりが訪れた。

あっという間だった。颯爽とステージを去る5人の背中を追う。スクリーンがゆっくりと降りていき終演を告げるアナウンスが流れる。それでもヲタクたちからアンコールの声が上がる。もちろんアンコールがない事は判っている。それでも叫ばずにはいられない。わたしもその一人だ。そのアンコールに対して影から「やんないよ!アンコール!」と応えたのはウイカさんかな。どことなく嬉しそうに聴こえたのは気のせいだろうか。

特典券付CDは枯れてしまっていたのでチェキを撮る事は叶わなかったが、しかし何ともいえない幸福感に包まれていた。脳裏に、網膜に焼きつけた彼女たちの姿を思い浮かべなからニヤニヤしたり泣きそうになったりしている人がいたら、それがわたしです。